入江和夜は裏口から出て行った。正面玄関を使うと目立ちすぎて、人目につきやすいからだ。
裏口は、藤本家の厨房に食材を届ける場所だった。
これから行われる誕生日パーティーのため、執事はすでに大量の食材を仕入れ始めていた。今も数人が新鮮なタラバガニを運び、厨房の責任者の後ろを恭しく頭を下げながらついて行っていた。
入江和夜は、その中の二人の見覚えのある人物を見つけた。
二人とも体格がよく、筋肉質で、一目で力の強さが分かる男たちだったが、今はタラバガニの箱を押しながら、頭を下げて売り手の後ろについて行っていた。
この二人は、入江桂奈の部下だった。
以前、海外の地下室で彼らを見かけたことがある。その時、彼らは入江桂奈の殺し屋で、非常に優れた腕前を持っていた。
彼は覚えている。たろうが言うことを聞かなかった時、連れて行かれる時、たろうは必死に息子の車を守ろうとした。人間よりも大きな犬は、まるで狼のように素早く動いていた。