デブちゃんの声が突然後ろから聞こえてきた。「建吾、芽、お前たちここで何をしているんだ?!」
その声に、話をしていた三人は瞬時に目が覚めた。
二人のボディーガードが即座に振り向き、一人が素早く動いて、建吾と芽の前に立ちはだかった!
藤本の方は、肩を一撃で打たれ、気絶してしまった。
そして、彼は冷笑いを浮かべながら入江和夜の方を見た。「坊ちゃま、本当にこの二人を誘い出すことができましたね!」
その言葉を聞いて、建吾と芽はさらに怒りを募らせた。
特に芽は、真っ黒な瞳で入江和夜を睨みつけながら、「ひどい人!嘘つき!私とお兄ちゃんは許してあげようと思ったのに、好きになろうと思ったのに、こんなことするなんて!」
彼女がさらに叫ぼうとしたが、ボディーガードに口を押さえられた。ハンカチには睡眠薬が染み込んでいたようで、芽はそのまま気を失ってしまった。
建吾はその様子を見て口を閉ざし、一言も発しなかった。
ボディーガードは彼のその態度を見て、すぐには手を出さず、むしろ笑いながら言った。「お前はなかなか素直だな。」
建吾は何も言わなかったが、視線は入江和夜に釘付けだった。
入江和夜は彼らをぼんやりと見つめていた。説明したかった、違うんだと、そうじゃないと。でも突然、帰国前に父が確かに言っていたことを思い出した。藤本凜人と寺田凛奈の関係を引き裂くようにと。
その時の彼は本当に馬鹿で、愚かに尋ねていた。「もし失敗したらどうしますか?」
入江桂奈は彼の頭を撫でながら言った。「心配いらないわ。あなたが現れただけで、あの二人の間には必ずヒビが入るはずよ。だって、自分の恋人が他の女性との間に子供を作っていたなんて、許せる女性なんていないでしょう?」
そして、さらに低く笑いながら言った。「それに、パパもあなたを助けるわ。藤本家の後継者になれるように。」
その時は、その「助ける」が何を意味するのか分からなかったが、今になって理解できた!
でも、こんなことになるとは本当に思っていなかった。
彼は二人のボディーガードを見て、必要ないと、この二人の子供を解放してほしいと言いたかった。でも突然、この二人の手強さを思い出した。
彼は坊ちゃまと呼ばれてはいたが、実際には発言権など全くなかった。