第711話 私はあなたに物語を語ろう

福山さんの話を聞いて、佐竹璃与は一瞬躊躇してから、森岡さんに言った。「もう一日時間をください。あなたの幽蘭の症状を教えてください。写真を送っていただいても構いません。私が誰かに相談してみます!」

森岡さんはその言葉を聞いて少し驚いた。「本当に何か方法があるんですか?」

佐竹璃与はため息をついた。「最近知り合った若い友人がいて、蘭の治療がとても上手なんです。彼女に相談してみます。もし彼女でも治せないようなら、その時は北島梨恵佳に頼んでもいいでしょう!」

森岡さんは佐竹璃与と北島梨恵佳の間の確執を知っていた。その言葉を聞いて、一秒ほど黙った後で口を開いた。「分かりました!三井夫人、私たちは長年一緒に蘭を育ててきました。私はあなたを信頼していますし、もう一度チャンスを差し上げましょう。今回も幽蘭に問題が起きなければ、私たちの約束を破ることはなかったでしょう。一日の猶予を差し上げますが、それでも解決できなければ、私の判断をお許しください。」

佐竹璃与は頷いた。「分かっています。」

本当に蘭を愛する人は、花を命のように大切にする。森岡さんはこの業界の第一人者で、幽蘭は彼の命そのものだった。だから彼女には理解できた。

電話を切ると、森岡さんは花の症状を送ってきた。長年の栽培経験から、これまでの手入れや土壌の状態など、細かい情報まで含まれていた。

佐竹璃与はそれをしばらく見つめた後、福山さんの方を見上げた。「この幽蘭は本当に難しい状態です。松野さんがここにいても、この花を救うのは簡単ではないでしょう。だから、賭けに出ましょう!」

福山さんはその言葉に少し驚いた。「何に賭けるんですか?」

佐竹璃与は深く息を吸い込んだ。「私の運命に賭けます。もし凛奈がこの花を救えたら、あの翡翠蘭は私のものです。運命的に私のものだったものは、必ず私のものに戻るはずです。」

福山さんにはその真意が分からず、ただ頷いた。「そうですね!」

彼女には分からなかったが、この瞬間、佐竹璃与は心の中である決断を下していた。

もし寺田凛奈がこの蘭を救えたら、それはほぼ奇跡と言えるだろう。

そうなったら、あの時の真実を彼らに話そう。

若い世代に迷惑をかけたくはなかったが、母子の血のつながりは否定できない。北島梨恵佳の言う通り、芽は彼女を祖母として慕っている。