第719章 顔面崩壊（3）

北島梨恵佳の瞳孔が縮んだ。

かつて藤本修也の結婚に介入し、誰もが非難する愛人となったことは、彼女の人生における恥辱だった。今でも人々は彼女のことを、のし上がった愛人として語る。

今、寺田凛奈がこんな大勢の前でそんなことを言うなんて、本当に腹が立った。

北島梨恵佳は怒りに満ちた表情で言った。「寺田さん、どういう意味ですか？」

「賭けるのが怖いんですか？」

寺田凛奈は眉を上げた。

北島梨恵佳は怒りに任せて、この状況に追い込まれ、仕方なく口を開いた。「いいでしょう。」

彼女は拳を強く握りしめた。

藤本家に戻り、京都での地位を取り戻すため、彼女は本気だった。しかしよく考えてみれば、この花に問題があるはずがない。それに、寺田凛奈との賭けの条件は完全に不利なものだった。

実際、寺田凛奈があの薬が強すぎると言った時、北島梨恵佳はすでに少し不安を感じていた。海外で薬物研究をしていた年月で、彼女もいくらかの知識を得ていた。

しかし彼女は確信していた。たとえ問題が起きたとしても、それは後になってからだ。

一時間以内に問題が起きることはありえない。

この賭け、絶対に勝てる。

そう考えると、北島梨恵佳は少し気が楽になった。なぜなら、この賭けは明らかに寺田凛奈が不利だからだ。

双方が賭けを交わした後、北島梨恵佳は他の人々を呼び寄せ、直接指示した。「この鬼蘭をよく見ていてください。何か問題が起きたら、すぐに私に知らせてください！」

鬼蘭がどんなに高価な品種でも、北島梨恵佳にとってはただの一鉢の花に過ぎない。彼女が気にしているのは花ではなく、この賭けに勝つことだった。

彼女の声は大きく、皆に聞こえていた。北島梨恵佳は笑いながら説明した。「賭けをしたので、負けを認められない人が一時間以内にわざとこの花を台無しにするのが心配なんです。そうなったら、認めない人がいても困りますからね。」

佐竹璃与はそんな言葉には反応せず、むしろ寺田凛奈を脇に引き寄せ、声を潜めて尋ねた。「教えて、あなたは本当に松野なの？」

寺田凛奈は唇を曲げ、頷いた。

佐竹璃与は「……」