第726章 世界の王king

藤本修也は遺言書を手に持ちながら言った。「これはお前の祖父が残した遺言書だ。当時彼が亡くなった時、遺言書は残されていなかったが、この遺言書は有効だ!まだ否認するつもりか?」

藤本凜人は冷笑して言った。「もちろん否認はしない。あなたの望むものを差し上げましょう。倉田。」

「はい。」

いつの間にか、ドアの所に現れた倉田健祐が入ってきて、手に持っていた株式譲渡契約書を藤本修也に直接渡した。「藤本さん、これは社長が用意した株式譲渡書です。ご署名をお願いします。」

この展開は、皆の予想を超えていた。

人々は一様に困惑して藤本凜人を見つめた。

倉田健祐は説明した。「社長は当時あなた方が彼を陥れたことを知っていたのですから、当時旦那様が遺言書を残さなかったことに問題があることを理解していないはずがありません。ですから、社長は旦那様の一銭一厘も欲しがりません。全てをあなたにお返しします。これで藤本家の養育の恩に報いたことになりますね。」

藤本修也はこれらの言葉を聞いて、心に少しばかりの恥じらいを感じた。

彼は藤本凜人を見つめ、再び諭すように言った。「凜人、なぜそこまでするんだ?お前は藤本家のために長年懸命に働いてきた。今の藤本家はもはやお金の問題ではない。本当に藤本家が滅びるのを見たいのか?」

藤本奥様はさらに藤本凜人が去ることを惜しんでいた。

彼らが今日来たのは、藤本凜人を追い出すためではなく、ただ一つの目的があった。それは佐竹璃与に野村智弘の怒りを鎮めてもらうことだった。

藤本修也は佐竹璃与に想いを寄せていたが、どんなに惜しくても、今日この一歩まで来てしまった以上、彼女を手放さなければならなかった。

藤本奥様が口を開いた。「凜人!」

彼女の老いた目には涙が浮かんでいた。自ら育て上げた孫に、どうして愛情がないわけがあろうか?しかも息子がどんなに優秀でも、孫の優秀さは目の当たりにしてきたのだ!

藤本凜人は藤本修也よりもビジネスセンスがあった。

彼を権力者にすることは、藤本家にとって最善の選択だった。

藤本優希も驚いた。「兄さん、本当に決心がついたんですか?」

彼は一生をかけて争ってきた権力者の地位を、こうして手放すのか?

皆が思いを巡らせている時、藤本凜人が口を開いた。「署名してください。」