藤本修也は藤本凜人の痛いところを突いてしまったことに全く気付かず、まだ野村智弘がどれほど素晴らしいかを語り続けていた。
彼がそう話す中、佐竹璃与は徐々に頭を下げていった。
彼女には分かっていた。藤本家の平穏を壊したのは自分だということを。
彼女が心の中で苦悩している時、藤本修也が道徳的な高みから彼女を非難している時——
藤本凜人が突然口を開いた。「つまり、あなたは妻を手放すことに甘んじて、さらには息子が誘拐されたという芝居まで打ったということですか?」
その一言で、部屋の中の声は途絶えた!
佐竹璃与も急に顔を上げ、信じられない様子で彼らを見つめた。
藤本修也は口を開けたまま、心の内を言い当てられて驚いた様子で彼を見つめていた。まさか藤本凜人がそんな言葉を口にするとは思ってもみなかったようだ。
佐竹璃与は茫然自失から衝撃へと変わり、ゆっくりと眉をひそめながら、信じられない様子で藤本修也を見つめた。彼女は唾を飲み込んで尋ねた。「凜人、どういう意味?」
藤本修也は即座に叫んだ。「藤本凜人、でたらめを言うな!」
藤本凜人は目を伏せたまま、「本来なら体面を保たせてあげようと思っていたのに、自分から突っ込んでくるなら、いっそのこと全部さらけ出しましょう!」
そう言って、彼は藤本修也を見つめた。「あの時、野村智弘が家に来て、元カノの話をした時、その元カノが母だと分かっていたんでしょう?」
藤本修也は認めなかったが、突然佐竹璃与を見る目が合わせられなくなった。「何を言い出すんだ?」
藤本凜人は冷笑した。「その後の数年間、藤本家は何者かに圧力をかけられ、寺田家はその間に徐々に優位に立ち、京都一の名家になりそうだった。違いますか?」
藤本修也はすぐに口を開いた。「それは寺田亮が優秀で、私にビジネスの才能がなかったからだ!」
「そうですか?」
藤本凜人は目を伏せた。「藤本家には長男が家族の権力を継承する習慣はありません。あなたはその時、少し問題児でしたが、おじいさまがあなたを選んだのには、きっと理由があったはずです。叔父たちはみなあなたの地位を狙っていましたが、奪えなかった。これもあなたにビジネスの才能がなかったからですか?」
藤本修也は言葉に詰まった。