寺田凛奈はまだ嫁いでもいないのに、藤本家で息子を虐めた使用人を処分しようとしていた。
この件が広まれば、実に評判が悪くなるだろう。
そして最も評判が悪いのは、彼女が処分に失敗したことで、藤本家で尊重されていないことが露呈してしまったことだ。これこそが藤本優希の狙いだった。
彼は藤本凜人と一生争い続け、藤本家の権力者の地位を狙っていたが、ずっとその座を手に入れることができなかった。
今やっと彼の足を引っ張るチャンスが訪れ、藤本優希は心を尽くして策を練っていた。
この時、彼は得意げな表情で寺田凛奈を見て、口を開いた。「お義姉さん...まだ正式な義姉さんではないですが、これは良くないですよ。証拠もないのに、勝手に使用人を解雇するなんて。今は昔と違います。使用人も人間で、私たちと同じく平等なんです。私たちの間には労働契約があるんですから。どうしても解雇したいなら、N+1ヶ月分の給与を補償しなければなりません。それとも、経理部に多めの退職金を出させましょうか?」