第733話 誰が証拠がないと言った!

寺田凛奈はまだ嫁いでもいないのに、藤本家で息子を虐めた使用人を処分しようとしていた。

この件が広まれば、実に評判が悪くなるだろう。

そして最も評判が悪いのは、彼女が処分に失敗したことで、藤本家で尊重されていないことが露呈してしまったことだ。これこそが藤本優希の狙いだった。

彼は藤本凜人と一生争い続け、藤本家の権力者の地位を狙っていたが、ずっとその座を手に入れることができなかった。

今やっと彼の足を引っ張るチャンスが訪れ、藤本優希は心を尽くして策を練っていた。

この時、彼は得意げな表情で寺田凛奈を見て、口を開いた。「お義姉さん...まだ正式な義姉さんではないですが、これは良くないですよ。証拠もないのに、勝手に使用人を解雇するなんて。今は昔と違います。使用人も人間で、私たちと同じく平等なんです。私たちの間には労働契約があるんですから。どうしても解雇したいなら、N+1ヶ月分の給与を補償しなければなりません。それとも、経理部に多めの退職金を出させましょうか?」

多めの退職金を出すということは、この二人が何も悪いことをしていないのに、寺田凛奈が気に入らないという理由だけで解雇したことを認めることになる。

これが広まれば、寺田凛奈が権力を笠に着て人をいじめているということになるではないか?

藤本優希は本当に良い算段をしたものだ。

寺田凛奈は相変わらず冷淡な表情で、藤本優希の様子を見ながら、直接その二人の使用人を見て、冷笑を浮かべた。「本当に自主退職しないつもり?」

北沢と秋田の二人は慌てて首を振った:

「私たちは本当に何も悪いことはしていません。どうして辞職できるでしょうか?」

「そうですよ、寺田さん。私たちのことが気に入らないなら、直接おっしゃってください。解雇することはできますが、こんなに横暴な方法で私たちに自主退職を強要するのはいかがなものでしょうか?」

二人は話すほどに委屈そうになり、周りの人々が公園の裏門に集まってきて、藤本家の使用人たちが騒ぎを見物していた。

藤本優希は振り返って一瞥すると、群衆の中にいた彼の手下たちがすぐに空気を煽り始めた。「寺田さん、まだ嫁いでもいないのに、藤本家の人を処分する資格があるんですか?」

「そうですよ、使用人だって人間です。なぜそんなに横暴なんですか?」