その聞き慣れた声を聞いて、入江和夜の瞳孔が急に縮んだ。
しかし、心の中には突然懐かしさが込み上げてきて、彼は直接携帯に向かって言った。「お父さん、会いたかった」
入江桂奈の教育に問題があったとしても、入江和夜の過去5年間は、ずっと入江桂奈が育ててきたのだ。
藤本家では、入江和夜はこの人の顔色を伺い、あの人の顔色を伺わなければならなかったが、入江桂奈の前では、彼は唯一の存在だった。
彼のこの言葉に、入江桂奈は嘲笑うように笑った。「私に会いたい?じゃあ、帰ってきなさい。迎えに行かせるわ」
入江和夜は黙り込んだ。「……」
入江桂奈は彼のその様子を見て、口を開いた。「ほら見なさい。実の親に会ったら、もう戻ってこないって分かってたわ!口では会いたいと言いながら、もう彼らの家族の一員になってるんでしょう?」
入江和夜は頭を下げた。「お父さん、僕はあなたのことを忘れません」
でも、もう戻らない。
あの地下室から出た瞬間から、もう戻りたくなかった。それに、以前戻りたかったのは、あの動物たちのためだった。
しかし入江桂奈は小動物たちを全部彼のところに送ってきた。
入江和夜の最後の心配事もなくなった。
入江桂奈は彼に無理に戻るよう要求はしなかったが、ただ尋ねた。「名前を変えたの?」
入江和夜は答えた。「いいえ」
「ちっ、藤本凜人のような性格で、お前が入江姓を名乗るのを許すはずがないだろう?私、入江桂奈は彼らの目には悪人だ。お前が入江姓なら、良く思われるはずがない!」
入江和夜は藤本凜人のために説明しようとしたが、何も言わなかった。
入江桂奈は話題を変えた。「お母さんはどう?」
入江和夜はこの質問の意味が分からず、直接答えた。「とても元気だよ。どうしたの?」
「……別に」
入江桂奈が何か言おうとした時、ドアをノックする音が聞こえ、寺田芽が呼んでいた。「和夜お兄ちゃん、早く出てきて、ご飯だよ〜!今日のご飯すっごく良い匂いがするの。和夜お兄ちゃんの大好きなチキンレッグもあるよ〜」
入江和夜はこの言葉を聞いて、すぐに電話の相手に向かって言った。「お父さん、先にご飯食べに行くね!」
言い終わるとすぐに電話を切り、ドアを開けて外に走り出した。
海外。
ある薄暗い部屋の中。