第766章 命を賭けて

大勢の人々が、前方の廃鉄工場へと潜入していった。

今夜の任務は実際、少し難しかった。

彼らの百人ほどは普通の人間だが、柳田さんの配下には遺伝子改良剤を使用した者もいた。そう考えると、普通の人間は不利な立場にあるようだった。

しかし、藤本遊智が呼んだ人数が多く、奇襲だったため、柳田さんの部下の多くがここにいなかったのは幸いだった。

ここには30人ほどしかいなかった。

そのため、藤本遊智は必ずこの地域を制圧できると自信満々だった。

「お前たちはこのドアから入れ、お前たちはあのドアから...」藤本遊智は誰も逃げられないよう、一つ一つ配置を指示した。

今日は柳田さんを捕まえるだけでなく、情報を漏らさないようにしなければならなかった。さもなければ、柳田さんの部下たちが二度と来なくなり、一網打尽にできなくなってしまう。

部下たちが何か悪いことをしたわけではなく、遺伝子改良剤を注射したため、寿命が2年しか残っていないのだ。

石山博義の考えでは、きっとそれらの人々を救いたいのだろう。

結局のところ、ほとんどの人は真相を知らず、この柳田さんが何をしているのか分からない。彼らが支配されているのは、ただ強くなりたいと思っただけで、死に値する罪ではない。

特殊部門の人々が到着後すぐに来て、石山博義と藤本柊花が主力と先鋒として、最前線に突っ込んでいった。

彼らはやはりプロフェッショナルだった。

石山博義と藤本柊花はそれぞれ人々を率いて、別々のドアから攻め入った。

この鉄工場には出入り口が3つあり、残りの1つのドアは藤本遊智、藤本凜人、寺田凛奈が攻撃を担当した。

藤本遊智が先頭に立ち、寺田凛奈に向かって鼻を鳴らした。「俺の後ろについてこい。兄貴の足を引っ張るなよ、分かったか?」

「...」

寺田凛奈は彼を無視し、ただのんびりと彼の後ろについていった。

彼女のそのだらけた様子を見て、藤本遊智は思わず口を開いた。「お前、買い物にでも来てるのか?それとも人を捕まえに来たのか?」

中にいる人々がどれほど残虐なのか、彼女は本当に分かっているのだろうか?

しかし寺田凛奈はまだのんびりと彼を一瞥し、ゆっくりと口を開いた。「ふーん」

藤本遊智はまるで綿を殴るように力が抜けた感じがした。