藤本凜人は一歩前に出た。この柳田さんは確かに手練れで、おそらく遺伝子薬剤を服用していたため、身のこなしが素晴らしく、力も強大で、対処が難しかった。
柳田さんは彼と対峙した途端、手ごわい相手だと悟った。入り口の両側にいるのは専門の警察官だと思っていたが、こちらの相手は楽に倒せると思っていたのに、どうやら相手を見誤ったようだ!
彼は後ろの部下たちに向かって叫んだ。「お前たち、先に突っ切れ!」
この数人が逃げ出せば、藤本凜人の注意が分散し、その隙に逃げられると考えたのだ。
彼の後ろにいる数人は、彼が丹精込めて育て上げた部下たちで、彼らの世界では最強の存在だった。遺伝子改良注射を打った後も、最も効果が高かった者たちだ。
藤本遊智でさえ彼らの相手にならないほど、その強さは群を抜いていた。
部下たちは即座に頷き、柳田さんと藤本凜人を迂回して、寺田凛奈と藤本遊智の方向へ突進した。
藤本凜人は特に制止しなかった。
後ろの部下たちを完全に信頼しているようだった。
その様子を見て、藤本遊智は感動で胸が一杯になった。
以前は兄に無能呼ばわりされ、武術を長年練習しても少しも上達せず、見せかけだけの技だと罵られていたのに、今や兄は彼をこれほど信頼してくれている。
八人は柳田さんには及ばないかもしれないが、数で勝っているのだ!
絶対に兄を失望させるわけにはいかない!
そう思うと、藤本遊智は突然大きな意気込みが湧き上がり、覚悟を決めて前に出た。「兄さん、私にできます!ご安心を!」
この雄叫びとともに、彼は八人の中の一人に襲いかかった!
藤本遊智は、自分の人生で最も輝かしい瞬間は間違いなく今この時だと感じた。素手で、藤本凜人の後ろについてこの八人の...うちの一人と戦っているのだ。
彼は全力を振り絞って相手の攻撃を避け、拳と足を合わせて応戦した。
パンパンと打撃音が鳴り止まない。
二人とも手足を全力で使い、服についた埃まで叩き落とすかのように激しく戦った。藤本遊智は打たれた箇所の骨が折れそうなほど痛み、力が抜けそうになった。
しかし、諦めるわけにはいかない!
兄の面目を潰すわけにはいかないのだ!
そこで、藤本遊智は歯を食いしばり、さらに激しく相手を攻撃し続けた!
「あああああああ!」
叫び声とともに、藤本遊智はついにその相手を地面に叩きつけた!