第768話 私は必要としない

藤本遊智は急に緊張し、彼の見方では、この八人の中で最も手強い相手を止めたはずだった。

彼はこの義姉のことをあまり好きではなかったが、兄のために、彼女を傷つけさせるわけにはいかなかった。

この男が義姉の側に走っていったのは、彼女を人質にして、みんなを引き下がらせるつもりだったのか?

まったく厄介な!

やっぱり女は面倒だ、なんでここに来たんだ?

そう思った瞬間、彼は駆けつけようと足を踏み出したが、その男が寺田凛奈に手を伸ばすのが見えた。

いつの間にか彼の手にはナイフが握られており、直接寺田凛奈の首めがけて突き刺そうとした。

「誰も動くな!さもないと俺は...」

殺すぞという言葉が口から出る前に、寺田凛奈は突然手を伸ばし、彼の手首をがっちりと掴んだ。そして軽く力を入れた。

「バキッ!」