その言葉を残し、寺田凛奈は彼を素通りして、藤本凜人と一緒に外へ向かった。
この実験室にはもう意味がなかった。今は柳田さんを尋問して、誰が彼を操っていたのかを突き止め、黒幕を見つけ出さなければならない。
二人が入り口まで来たとき、藤本遊智はようやく先ほどの言葉の意味に気づき、目を見開いて信じられない様子で、驚愕しながら寺田凛奈の後ろ姿を見つめた。
入り口は狭く、二人が同時に通れないため、藤本凜人は無意識に半歩下がり、寺田凛奈は何の違和感もなく堂々と出て行った。
藤本遊智:「……」
兄さんがいつから人に道を譲るようになったんだ?
彼はいつも家族の先導者だったのに、今は自然に道を譲っている。
好きだからというだけでなく、その人に価値があるからこそ!
だから、彼女は本当に大師姉なんだ!