第769話 新しい罠

その言葉を残し、寺田凛奈は彼を素通りして、藤本凜人と一緒に外へ向かった。

この実験室にはもう意味がなかった。今は柳田さんを尋問して、誰が彼を操っていたのかを突き止め、黒幕を見つけ出さなければならない。

二人が入り口まで来たとき、藤本遊智はようやく先ほどの言葉の意味に気づき、目を見開いて信じられない様子で、驚愕しながら寺田凛奈の後ろ姿を見つめた。

入り口は狭く、二人が同時に通れないため、藤本凜人は無意識に半歩下がり、寺田凛奈は何の違和感もなく堂々と出て行った。

藤本遊智:「……」

兄さんがいつから人に道を譲るようになったんだ?

彼はいつも家族の先導者だったのに、今は自然に道を譲っている。

好きだからというだけでなく、その人に価値があるからこそ!

だから、彼女は本当に大師姉なんだ!

だからこそ、普段は身内に甘い兄さんが、自分が寺田凛奈の悪口を言った時に、黙って意味ありげな笑みを浮かべていたんだ。

あの時は兄さんが大師姉を好きだからだと思っていたけど、今やっと分かった!

藤本遊智は面目を失い、すっかり気が滅入ってしまった。

まさか大師姉を馬鹿にしていたなんて!

今謝れば間に合うだろうか?

そう思いながら、藤本遊智は急いで後を追った。

寺田凛奈は外に出る途中、ずっと問題について考えていた。V16の手がかりの詳細を知りたかったし、先ほどの柳田さんの件があって、もう待ちきれない気持ちだった。

思わず足取りが早くなり、藤本凜人は彼女の後ろについて行った。

二人が車の前に着くと、藤本凜人が寺田凛奈のためにドアを開けようとした瞬間、一つの影が滑り込んできて、直接ドアを開け、腰を低く曲げて謙虚に言った:「お嫂さん、頭をぶつけないように!」

寺田凛奈:「……」

藤本凜人:「……」

藤本遊智は満面の笑みを浮かべ、熱心に彼女を見つめながら:「お嫂さん、私の武術の才能はどうですか?瀬戸門に入門する望みはありますか?あなたの弟子になれますか?」

「……」寺田凛奈は少し考えてから、ため息をつきながら:「瀬戸さんに教えてもらいなさい。」

そう言うと、彼女は携帯を取り出し、瀬戸さんに電話をかけた。

瀬戸さんは大きな声で叫んだ:「凛奈ちゃん、何の用だ?」