第774話 彼女は待ちきれない!

寺田凛奈は待ちきれなかった。

銀行の金庫の中身はV16ではなく、V16の手がかりかもしれない。そして入江和夜がV16を服用しなければならない時期まで、残り2ヶ月と20日しかなかった。

彼女にとって、一日一日が苦痛だった。

特に今日、揚城から帰ってきてから、家の雰囲気が明らかに良くないことに気付いた。寺田芽はゲームをしておらず、藤本建吾も数学の問題を解いていなかった。二人とも入江和夜の周りにいた。

寺田芽は自分の大好きなバービー人形とプリンセスドレスを取り出して、彼にあげようとした。

入江和夜は受け取らなかった。

藤本建吾も、自分が買った数学の問題集を全部彼にあげようという意思を匂わせていた。

入江和夜もそれを受け取らなかった。

小さな子供はソファーにだらしなく座り、手を振って言った。「僕はそんなものに興味ないよ。動物が好きなだけさ!」

寺田芽はそれを聞いて、すぐに提案した。「私のおじさんも動物が大好きで、たくさんの野良犬や野良猫を飼っているの。寺田治おじさんに何匹か持ってきてもらおうよ!」

しかし入江和夜は手を振って断った。「いらない。その動物たちはおじさんの友達で、僕の友達じゃないもの。」

寺田芽は訂正した。「和夜、あれは私たちのおじさんよ。とても優しい人だし、それにたくさんの猫や犬を飼うのにはお金がかかるの。おじさんはお金がないから、私たちが何匹か飼ってあげれば、きっと喜んでくれるわ!」

藤本建吾もうなずいて言った。「そうだよ。おじさんは雑種の犬も一匹飼っているんだ。」

その言葉を聞いて、入江和夜はすぐに口を開いた。「そうだとしても、僕の小花じゃないもの。」

小花は彼の3番目の犬で、体中の斑模様の毛並みから小花と名付けられた。小花という名前はありふれすぎていて、小花自身も嫌がっていたが、入江和夜はそう呼び続け、小花も仕方がなかった。

そして小花は、数匹の犬の中で最も健康だった。

しかし今朝、小花はそこに横たわったまま、二度と目を覚まさなかった。

入江和夜は生き別れや死に別れに慣れていた。寺田芽、藤本建吾と三人で裏庭に穴を掘り、小花を埋めた。

そして今、裏庭には何個もの盛り上がりができていて、その中には全て入江和夜の友達が眠っていた。

裏庭に行くたびに、みんなの気持ちは重くなった。