第775話 見知らぬ人!

営業フロアは真っ暗だった。

寺田凛奈は中に入ると、まず携帯を取り出した。画面には銀行の見取り図が映っていた。

母が20年以上前にここに預けたものだが、銀行は長年レイアウトを変更してきたものの、貸金庫の場所だけは変わっていなかった。

だから、物はまだそこにあるはずだ。

寺田凛奈は06番の貸金庫で、暗証番号は自分の誕生日だということをはっきりと覚えていた。

そこで、彼女は音を立てないように貸金庫のある方向へ向かった。

中には職員はおらず、警備員が巡回しているだけだったが、彼女を見つけるのは難しいはずだった。

寺田凛奈は黒い服を着ており、その姿は闇と一体化していた。

彼女は身のこなしが軽やかで、貸金庫のある場所へ直行したが、二つの部屋を通り過ぎたところで、突然後ろから足音が聞こえてきた。