営業フロアは真っ暗だった。
寺田凛奈は中に入ると、まず携帯を取り出した。画面には銀行の見取り図が映っていた。
母が20年以上前にここに預けたものだが、銀行は長年レイアウトを変更してきたものの、貸金庫の場所だけは変わっていなかった。
だから、物はまだそこにあるはずだ。
寺田凛奈は06番の貸金庫で、暗証番号は自分の誕生日だということをはっきりと覚えていた。
そこで、彼女は音を立てないように貸金庫のある方向へ向かった。
中には職員はおらず、警備員が巡回しているだけだったが、彼女を見つけるのは難しいはずだった。
寺田凛奈は黒い服を着ており、その姿は闇と一体化していた。
彼女は身のこなしが軽やかで、貸金庫のある場所へ直行したが、二つの部屋を通り過ぎたところで、突然後ろから足音が聞こえてきた。