第776章 決別の時!

「カチッ」

寺田凛奈が金庫を開けようとした時、入り口でドアの開く音が響いた。

彼女が振り返ると、黒服の男が入ってきて、スイッチに手を伸ばし、「カチッ」という音と共に部屋が昼のように明るくなった。

寺田凛奈は杏色の瞳を細めた。

幼い頃から、どの分野でもトップを走ってきた彼女だが、この瞬間、初めて無力感を覚えた。

この男は強すぎる。

正直なところ、藤本凜人と戦った時でさえ、こんな感覚はなかった。考えに耽っている間に、男は再び拙い中国語で言った。「物を出せ。そうすれば命は助けてやる」

寺田凛奈は動かず、金庫を開けようとする姿勢のまま、時間を稼ごうとした。「遺伝子薬剤を使って、そんな風になったんでしょう。その偽りの強さで、人を威圧することはできないわ」

男は冷笑した。「藤本凜人ならそう言う資格もあるだろうが、お前に何の資格がある?お前だって遺伝子薬剤を注射されただろう?」