鉄の扉が、二つの世界を隔てていた。
寺田凛奈は力を振り絞って、足で蹴り、押したが、その扉を開けることはできず、中の火がどんどん大きくなっていくのを見ることしかできなかった。
そして、この爆発音は、ついに警備員の注意を引き、直接消防隊員を呼んで消火に向かわせた。
寺田凛奈はその扉を見つめていた。
彼女の頬には終始、平静と冷静さが漂っており、人々が押し寄せてきた後でさえ、理性的に鉄の箱を自分のポケットに入れた。
すぐに、鉄の扉の中の火は消え、消防隊員がついに工具で扉をこじ開け、中に突入した。
中の全てが爆発し、灰になっており、床には焼け焦げて元の姿が分からず、骨だけが残った遺体が横たわっていた。
一つの遺体...これは寺田凛奈に希望を与えた。
黒服の男と藤本凜人の二人が中にいたのに、なぜ一つの遺体しか見つからないのか?
彼女はその場で、風聞を聞いて事件解決に来た石山博義に向かって、直接口を開いた:「DNAの照合をお願いします。」
藤本凜人のDNAデータは、石山博義のところにはなかった。
しかし寺田凛奈は以前持っていて、後に入江和夜のデータと比較するために再度採取していたので、リリのところに正確な情報があった。
石山博義はこの要請を聞いて、頷いた。
また、なぜ深夜に銀行にいて、銀行を爆発させたのかと追及する人もいた。
しかし志村が銀行の全損害を補償することを約束し、石山博義は寺田凛奈が特殊部門の法律顧問として捜査に来ていたことは極めて正常だと説明した。
この件は直ちに収まった。
寺田凛奈は地面のその遺骨と共に、直接特殊部門へ向かった。
再びこの馴染みの場所に来ると、周りの以前彼女を冤罪に陥れた人々は、今や一人一人が恥ずかしくて彼女と向き合えなかった。
そして藤本柊花は知らせを聞くと、駆けつけてきて、信じられない様子で彼女を見つめた:「お姉さん、これ、これは兄さんですか?」
「違う。」
寺田凛奈は確信に満ちた口調で言ったが、それが柊花に向けて言ったのか、自分に向けて言ったのかは分からなかった。「遺体は一つだけ、彼のはずがない...」