第778話 痛快!打つのはお前だ!!

北島梨恵佳がそう言うと、全員が一斉に医者の方を見た。

寺田凛奈は医者の真正面に立ち、その医者の口元を見つめていた。すると医者は一言一句はっきりと口を開いた。「……寺田さんから提供されたDNA標本により、確かに藤本凜人さんであることが確認されました。」

「……」

その一言で、その場は静まり返った。

全員が信じられない様子で医者を見つめた。

寺田凛奈は冷静な表情で、杏色の瞳を伏せ、何かを考えているようだった……

-

-

藤本家の邸宅の門前には、大勢の人々が群がっていた。

数台の車が到着した。

寺田凛奈が最初に車から降り、門前の藤本奥様が一歩前に出て、震える手で尋ねるのを見た。「寺田凛奈、凜人は?あの遺骨の照合結果は、凜人ではないんでしょう?」

寺田凛奈は黙したままだった。

「ちっ!」

もう一台の車が停まり、藤本修也、北島梨恵佳たちも降りてきた。車から降りるなり、藤本修也は藤本奥様を見つめ、膝から崩れ落ちた。

彼は泣きながら叫んだ。「母さん!」

その様子に、藤本奥様は何かを悟ったようで、目を見開いて一歩後ずさり、目の前が暗くなり、気を失いそうになった。

幸い、吉川はいつも五十嵐安神丸を持ち歩いており、状況を見て急いで一粒飲ませ、彼女の精神を落ち着かせた。藤本奥様は息を切らしながら、困惑して口を開いた。「一体これはどういうことなの?」

藤本修也は悲しみに暮れていた。

若い頃は悪事を働いていたとしても、息子は実の息子で、ずっと藤本凜人を誇りに思っていた。今、息子が死んでしまって……悲しまないはずがない。

北島梨恵佳はこの機会を捉えて口を開いた。「全て寺田凛奈のせいです!彼女が真夜中に凜人に持参金を要求し、凜人は彼女を銀行に連れて行きました。そして悪人に狙われ、お金を奪われ、凜人は爆死させられたのです!」

藤本奥様は再び一歩後ずさり、深く息を吸って、寺田凛奈を見つめた。

寺田凛奈は説明しなかった。

遺伝子薬剤のことを大々的に騒ぎ立てるわけにはいかなかったし、その上、今は心が乱れていて、説明する気持ちもなかった。ただそこに立ち、視線を藤本凜人の別荘の方向に向けていた。

三人の子供たちがまだそこにいて、どうしているかわからなかった。