寺田凛奈はカーテンを引き、ソファに座り、携帯電話を握る指に少し力を込めた。
昨夜の出来事が、再び目の前に浮かび上がった。
藤本凜人が彼女を押し出した時、彼女の耳元で五文字を囁いた:「凛奈、信じて」
黒服の男が現れてから、彼女と藤本凜人が銀行の貸金庫室に現れるまで、一分一秒が急いでいて、彼女と藤本凜人は一言も交わすことができなかった!
その瞬間、彼女は彼への信頼だけを頼りに、部屋を出た。
そして、鉄の箱が飛び出してきて、彼女は服の中に隠したが、振り返ると、藤本凜人が鉄の扉を閉める瞬間だった。
中からの轟音と、鉄の扉がカチッと閉まる音は、まるで巨大な岩のように、彼女の心に重くのしかかった。
彼を信じて……
しかし、石山博義たちが焼け焦げた遺体を運び出した時、彼女はまだ信じられず、心が落ち着かなかった。
だからこそ、まるで悪魔に取り憑かれたかのように遺体について検査センターまで行った。
そして……
データベースには藤本凜人のDNA報告がなかったため、寺田凛奈はリリに以前採取したサンプルを送ってもらうしかなかった。
リリが届けた時、寺田凛奈にDNAのデータは志村によって既に入れ替えられていることを暗示していた。
その瞬間、寺田凛奈の心は少し落ち着いた。
でも、まだ不安だった。
部屋に戻り、リリからの電話を受けて、相手が「DNAの照合結果は藤本さんではありません」とはっきりと言うのを聞くまで、その心は完全に落ち着くことはなかった!
電話を切ると、寺田凛奈は服を着替えずに、まず黒い服の中から鉄の箱を取り出し、テーブルの上に置き、そしてソファに座って、長い間黙っていた。
鉄の箱の中身が何なのかは、もはや彼女にとって重要ではなかった。重要なのは……藤本凜人は一体何をしたのか?なぜ偽装死を選んだのか?
そして、なぜ遺体を用意していたのか?
もしかして、貸金庫室の爆弾は、彼が仕掛けたものなのか?
彼がこうした目的は何なのか?
寺田凛奈には全く理解できなかった。
考え込んでいる時、突然携帯電話が鳴った。
電話に出ると、臼井陽一の声が聞こえてきた:「藤本さんが……と聞きましたが」
後の言葉を少し詰まらせて:「あなた……大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
寺田凛奈は目を伏せ、淡々とした口調で答えた。