第796章 寺田真治の救済

電話を切った後、寺田真治はソファに座り、遠くを静かに見つめながら、心が沈んでいた。

藤本家に行った寺田凛奈は、実際よく寺田家に戻って食事をしていたが、これまで寺田亮は彼に知らせることはなかった。今回の凛奈の帰宅に対して、寺田亮がこれほど深刻な様子を見せたことで、寺田真治は事態が露見したのではないかと感じた。

相原が今日のスケジュールを渡した時、彼は敏感に問題に気付いていた。

彼はもうそのアカウントの情報を追求しないと言っていたのに、相原は依然として今日の某人物との面談を予定に入れていた。相原がまだ諦めていないことは明らかだった。

寺田真治は知っていた。彼に従う部下たちは、誰一人として本当には諦めていないことを。

結局のところ、そのアカウントの存在は、彼らに寺田家の神話を作り上げる機会を与えるものだったのだから!

彼はその九人の仲間たちの気持ちを理解していた。

大学時代から彼に従い、その後留学してまでも、帰国後により良く彼を補佐するためだった。彼らは彼と栄枯盛衰を共にしてきた。

もし寺田真治の寺田家での発言力が弱まれば、これらの人々の寺田家での待遇も下がることになる。彼らは彼に忠実だった。

特に相原は、数少ない女性メンバーの中で非常に有能だった。彼は何もするなと言っていたにもかかわらず、相原はおそらくすでに凛奈に対して行動を起こしていた。

彼女が何をしたのか、寺田真治はおおよそ察していた。

相原は寺田洵太のような人間ではなく、暗殺のような大きな行動は起こせない。せいぜい些細な嫌がらせで凛奈を困らせる程度だろう。

正直なところ、寺田真治は相原を処分すべきだと分かっていた。

しかし、彼は彼女を守りたいと思っていた。

これほど長年彼に従ってきた功労も苦労もあり、そして相原は一度も失敗したことがなかった。唯一の失敗も、彼のせいで……

寺田真治は本来この件を収めるつもりだった。

しかし寺田亮が突然彼を夕食に呼び出したことで、寺田真治は理解した。もはやこの件は収まらないのだと。

それに、この件については凛奈に説明をしなければならない。

そう考えると、寺田真治は深いため息をついた。

昼頃、木田柚凪が突然やってきた。

寺田真治は木田柚凪を見て、少し驚いた:「どうしてここに?」

木田柚凪は手に持った保温弁当箱を掲げて:「お昼を持ってきたの」