「必要ないの?」
寺田真治は溜息をついた。「分かってる。お前は医学研究一筋で、商売のことは考えてもいないから、このアカウントは必要ないと思うかもしれない。でも、将来は...」
寺田凛奈は唇を噛んだ。
そのアカウントのことは、本来外部に漏らしてはいけないことだった。
帝国同盟のルールでは、後継者以外は誰も知ることができない。
だから、寺田真治の部下たちは、とても凄いビジネスアカウントがあることは知っているが、それが何のアカウントで、どこのものかは知らない。
しかも、彼らの家は特殊な事情があって、寺田真治と寺田凛奈は根本的に言えば、どちらも寺田亮の後継者だったからこそ、すべてを明かして話し合うことができた。
この会議には、木田柚凪さえも参加する資格がなかった。
だから寺田凛奈は最初にはっきりと説明しなかったのだ。
でも今、寺田真治と寺田亮の様子を見ると、はっきりと説明しないと、このアカウントを受け取らなければならないということ?
寺田凛奈は額を押さえた。
彼女は受け取りたくなかった。
今になって分かった。寺田真治の部下が彼女を狙った理由が。結局のところ、このアカウントのためだったのか!
彼女は寺田真治の言葉を遮った。「このアカウント、私も持ってます」
「...」
部屋は突然静まり返った。
寺田亮と寺田真治は驚いて、困惑した表情で彼女を見つめた。
しばらくして、寺田真治が咳払いをした。「凛奈、僕の申し出を断るために、わざわざ嘘をつく必要はないだろう...」
寺田亮も一瞬戸惑ったが、何かを悟ったような様子で「藤本凜人もグループにいるの?彼のアカウントを君たちに譲ったの?でもそれはおかしいな。もし彼がいたなら、前回kingが株式を売った時に、なぜ声を上げなかったんだ?」
二人があまりにも困惑している様子を見て、寺田凛奈は仕方なく本当のことを話すしかなかった。「あの、私自身が持ってるんです」
「...」
今度は、二人はさらに言葉を失った。
しばらくして、寺田亮は携帯を取り出し、グループチャットを開いた。「君は誰なんだ?」
「cat」
寺田亮:「...」
寺田真治:「...」
二人の男性は呆然としていた。
彼らは揃って寺田凛奈を見つめ、しばらくして寺田亮が尋ねた。「どうやってグループに入ったんだ?」