第372章：宋一帆の娘

"はははは……注文が5倍に増えたんだから、違約金も5倍に上げないとね。この前話していた材料は手に入ったかい？"

　　"はい、すでに入庫しています。"

　　"よし、しっかり見ておいてくれ。ドイツ側に連絡して、いつでも材料を5倍に増やせると伝えてくれ。盛豐の人には、すぐに到着すると返事してくれ。"

　　"かしこまりました。"秘書は頷いた。

　　"ただ、少し不思議に思うんだ。盛豐とはこれまで何度も取引をしてきたが、こんな大きな注文は初めてだ。今回はどうしたんだろう？"唐正浩は眉をしかめた。

　　秘書は笑みを浮かべて言った。"それは彼らが我々の実力を認めたということですよ。唐氏も老舗企業ですし、ここ2年は厲氏に打撃を受けましたが、製造業での発展は厲氏に劣らないものがあります。もしかしたら、これが私たちの転機かもしれませんよ？"

　　その言葉を聞いて、唐正浩は非常に満足げに笑みを浮かべた。"仕事に戻ってくれ。"

　　秘書が部屋を出ると、唐正浩は身支度を整えて出かけた。春風得意の表情だった。

　　5倍の注文だ。もしこの取引がうまくいけば、唐氏にとってここ数年で最大の利益になるだろう。

　　――――――――

　　蘇千瓷が話題になった。

　　かつてないほどの話題だ。

　　芸能界の人間ではないのに、わずか1日で微博での注目度は他のどんな芸能人よりも高くなった。

　　あるメディアは蘇千瓷の経歴や身分をまとめて記事にした。タイトルは目を引くものだった。《名門家族の奥様たちの真の姿》

　　蘇千瓷と国際ピアニストの宋一帆の名前が上位に掲載され、大きな注目を集めた。

　　帝都軍區――

　　"宋一帆の娘？"容海嶽は携帯に表示されたニュースを見て、クリックした。すぐに柔らかく精緻な顔に引き付けられた。

　　唇に笑みを浮かべ、若々しく活力に満ちた表情。満足げで、強い意志が感じられる。

　　容海嶽はしばらく見入っていたが、やがて目をテーブルの上の結婚写真に移した。

　　写真の中で、容海嶽は満足そうに笑っていたが、隣の女性は冷たく無表情だった。

　　顔立ちが、この少女に...よく似ている！

　　しかし、こちらは宋一帆の娘？

　　携帯を握りしめる手に力が入り、容海嶽は椅子から立ち上がって外に向かった。