第605章:厲墨森

彼も母親が欲しい、そしておじいさんとおばあさん、外のおじいさんとおばあさん、そして彼を可愛がってくれる叔父さんたち……

でも、彼は生まれた時から世界に期待されない存在だった。

実の母親は、彼が生後一ヶ月も経たないうちに、彼を叩き殺そうとした。

この出来事は、孤児院で笑い話として広まり、彼は全ての子供たちに嘲笑われた。

彼は怪物だ、外国人のような顔をしているから、実の母親は彼を殺そうとしたのだと。

そのことを思い出すと、墨森ちゃんの心は劣等感に満ち、抑えきれない悲しみに戸惑いを感じた。

唇を噛みながら、厲墨森はそちらを見つめ、壁に掛かっていた手を離し、背を向けた。

「墨森」蘇千瓷の声。

厲墨森は去ろうとした足を止め、少し嬉しそうに振り返った。

蘇千瓷の整った顔に優しい笑みが浮かび、自分に手を振っていた。