第604話:パンツをまだ履いていない

「おじいさん」と呼んで。

たった三文字で、容海嶽は手に持っていた厲簡謙への海賊王のフィギュアを床に落としてしまった。

容璇も蘇千瓷の方を見つめ、信じられない表情を浮かべていた。

厲簡謙はそれを見て、すぐにソファから降り、落ちたゾロのフィギュアを拾い上げ、心配そうに埃を払った。

何か言おうとしたが、大人たちの微妙な表情を見て、言葉を飲み込んだ。

彼らの視線に気づいたのか、蘇千瓷も同じように彼らの方を見返した。

容海嶽の顔と体には、火傷跡が残っていた。

夏だったので、容海嶽はシンプルな半袖の立ち襟ストライプTシャツを着ており、首元にかすかに残る傷跡や、手と顔の小さな傷跡が見えていた。

多くはなく、手入れのおかげで随分と薄くなっていた。

しかし、蘇千瓷にはわかっていた。それは容海嶽が彼らのために命を懸けた最も確かな証だということを。