第632話:友達なんていらない、君が欲しい

陸亦寒は彼女の表情の変化に気づき、微笑んだ。

大きな束のバラを抱えながら、ゆっくりと前に歩み寄った。

蘇千瓷は彼を見つめ、理由もなく恐れを感じた。

無意識のうちに、蘇千瓷は後ずさりし、逃げ出したくなった。

しかし、彼の深い愛情に満ちた瞳に触れた瞬間、蘇千瓷は逃げ出す勇気を失ってしまった。

陸亦寒は一歩一歩近づき、爽やかなハンサムな笑顔を浮かべながら、蘇千瓷を見て言った。「千千、早く来たね。」

そう、早く来すぎた。

最上階の大時計はまだ7時13分を指していた。

でも、陸亦寒は彼女のことをよく知っていて、彼女が早めに来ることを予測していた。

陸亦寒は手に持った花を少し前に差し出し、「先に食事にしようか?」と尋ねた。

蘇千瓷は手を伸ばしたものの、受け取らず、両手は宙に止まったままだった。