第643章：彼をベッドに誘う

厲司承はついに残りの縄を解き、赤く擦れた両手を見ながら、筋を伸ばした。

唐夢穎は彼の気持ちよさそうな様子を見ながら、赤ワインを一口飲み、赤い唇が上がった。

厲司承はそのワイングラスに付いた赤い口紅の跡を見て、唐夢穎の反応が彼の想像よりもずっと冷静だと感じた。

「今すぐ逃げ出すとは思わないのか？」

「逃げられないわ」唐夢穎は確信を持って言った。「外には大勢の人が見張っているのよ。ここから飛び降りる度胸でもない限り、逃げることはできないわ」美しい瞳を向けながら、唐夢穎は彼を一瞥して軽く笑った。「でも、下に行きたいなら連れて行ってあげられるわ。たった一言で済むことよ。共犯者を白状するか、それとも...私と一度寝るか。そうすれば行かせてあげる。四年よ、厲司承。やっと帰れるチャンスなのに、帰りたくないの？」

「そんなに私と寝たいのか？」厲司承は鳳眸で笑うでもなく笑わないでもない表情で、見下ろすように彼女を見つめ、軽蔑的な冷笑を浮かべた。

「もちろんよ」唐夢穎は軽く笑った。「夢にまで見るわ」

「残念だが、お前には感じない」率直な言葉は、どんな女性にとっても大きな侮辱だった。

特に、唐夢穎のような誰もが誘惑したがる魅惑的な女性にとっては。

唐夢穎の顔から笑みが消え、冷笑に変わった。「できないならできないで仕方ないわ。四年前のあの暴行で、そこも壊れちゃったの？」

厲司承は彼女の言葉を無視し、部屋の環境を観察し始めた。

内装は美しく、装飾や調度品からホテルのようだった。

しかし、唐夢穎はここにしばらく住んでいたようで、少し生活感があった。

彼が黙っているのを見て、唐夢穎は歯を食いしばって言った。「もう一つの方法があるでしょう？覚えてない？」

「共犯者を白状しろということか？」

「つまり、共犯者がいることを認めるのね？」

厲司承はその言葉を聞いて反問した。「否定したことがあったか？」

唐夢穎は目を細め、立ち上がってワイングラスを彼に差し出した。「一杯どう？」

厲司承はグラスを受け取り、手の中で軽く揺らした。