唐夢穎の体はまっすぐ後ろに倒れ込み、手に持っていたグラスがカーペットに落ち、赤い液体がすぐにカーペットに染み込んでいった。
厲司承は冷ややかな目で見つめ、周りを見回してから窓を開けた。
今夜は風が強く、とても強かった。
窓を開けると、強風が一気に入り込み、カーテンとレースカーテンが高く舞い上がった。
厲司承は下を覗き込んだ。とても高い。
ここは最上階で、おおよそ40階以上はあるだろう。
ここから飛び降りるのは、あまりにも非現実的だ。
厲司承は少し考え込んでから、周りを確認し、最終的にトイレに隠れ、ズボンのボタンを外して、ボタン部分をめくると、その中に小さな隠し場所があった。
その隠し場所には、小さな密封袋が隠されていた。
袋の中には、サファイアの十字架のピアスが入っていた。
「静姉さん、計画が変更になった。支援を要請する。」
……
30分後、静姉さんは大柄な黒服のボディーガードを連れて東方インターナショナルタワーに上がった。
黒服のボディーガードは黒い革ジャンを着て、背が高くスラッとしており、サングラスをかけ、威厳のある様子だった。
ドアの前にいたボディーガードたちは皆静姉さんを知っていて、挨拶を交わした後、静姉さんは当然のように唐夢穎のいるスイートルームまで行き、ドアをノックして言った。「お嬢様、私です。」
部屋の中からしばらくして、ドアが開いた。
静姉さんはその大柄な黒服のボディーガードと一緒に入り、約15分後、静姉さんは笑みを浮かべながら出てきた。
外のボディーガードたちは静姉さんの表情を見て、興味深そうに近寄ってきた。
すると、中からガチャガチャという音が聞こえてきた。その音はトイレから聞こえていた。
静姉さんの表情も相まって、ボディーガードたちはさらに興味を持ち、尋ねた。「どうしたんですか?」
「男女がトイレでこんな音を立てているって、何をしているか分かるでしょう?」静姉さんは'分かってないわね'という表情でボディーガードを見て、「しっかり見張っていなさい。何か必要があれば入ればいいけど、用もないのに邪魔しちゃダメよ!」
ボディーガードたちも意味ありげな表情で、揃って笑い出した。
静姉さんは連れてきたボディーガードと共にエレベーターに乗り、すぐに下りていった。