第682章：見て触れてキスして

厲司承は少しの危機感も持たず、低く笑って、小声で言った。「来いよ、殴ってみろ」

蘇千瓷は体を横に向けて一発パンチを繰り出したが、瞬時に厲司承に手を掴まれ、腕をねじられ、そのまま棚の扉に押し付けられてしまった。

厲司承は彼女の首筋の匂いを嗅ぎ、手で触れてみると、コンシーラーの層を感じ取り、思わず軽く笑った。

蘇千瓷の顔は更に赤くなり、彼を強く押しのけ、足を蹴り出しながら、可愛らしく怒って言った。「まだ笑うの！全部あなたのせいでしょ！」

深い漆黒の瞳がさらに深くなり、厲司承は大きな手で彼女の頬に触れ、頭を下げてキスをし、膝を彼女の脚の間に押し入れ、もう一方の手で彼女の腰を抱き締め、離そうとしなかった。

蘇千瓷の黒い瞳に後悔の色が過り、手で彼を押しのけ、拒むように首を振った。

厲司承は唇に笑みを浮かべ、最後に彼女の唇を軽く噛んで、「着替えろ」と言った。

蘇千瓷は赤面しながら彼を押しのけ、振り返って薄緑色の花柄のロングドレスを取り出した。

つま先立ちで一番上の棚から下着を探そうとしたが、届く前に大きな手が代わりに取ってくれて、「これを探してた？」と尋ねた。

蘇千瓷はそれを奪い取り、彼を押しのけた。「出てって、着替えるから！」

「出ていかないよ。君の体のどこを見てないっていうんだ？」大きな手で彼女を押さえながら、眉を上げて冗談めかして言った。「見ただけじゃなく、キスもしたし、触れたし、一緒に寝たこともある。恥ずかしがることなんてないだろう？」

蘇千瓷はその言葉を聞いて、かえって更に恥ずかしくなった。

怒って彼を押しのけ、手に服を持ったまま洗面所に入って着替えた。

厲司承は彼女が浴室に入るのを見て、苦笑いを浮かべた。

靴箱から同系色のフラットサンダルを取り出し、床に置いた。

ただ、目線を下げると、自分の昔の服や靴が全てまだそこにあることに気付いた。

彼が失踪した時は春で、服は長袖が多かった。

よく手入れされているのが分かり、服はまだ新品のように見え、ビジネススーツやワイシャツが多く、ネクタイも整然と並べられていた。

心が温かくなり、厲司承の瞳はより柔らかくなった。振り返ると、蘇千瓷はすでに着替えを済ませて出てきていた。