第769話：お風呂に入らないとキスさせない

「外で死にそうなほど忙しかったのに、楽しんだ後に逃げ出すなんて、薄情者め」話しながら、上着を脱ぎ、首のネクタイを解いた。

蘇千瓷は携帯を横に置き、バスローブを着てベッドの上で足を組んで座り、彼を見て笑みを浮かべながら言った。「だんな」

「ん？」厲司承は彼女を見ながら、服を脱いでいた。

「だんな」

「ん」

「だんな」

厲司承は今度は返事をせず、カフスを外しながら近づいてきて、ベッドの端に来ると、深い瞳で幽幽と彼女を見つめた。

蘇千瓷は頬を赤らめ、突然顔を覆い、ベッドに倒れ込んだ。

厲司承は不思議に思ったが、知らず知らずのうちに彼女に笑わされていた。

前に飛び込むように、厲司承は彼女の上に跨り、低い声で言った。「何を笑ってるんだ？」

蘇千瓷は手を離し、小さな顔を赤らめながら言った。「私、綺麗？」

厲司承はその言葉を聞いて、面白くなり、わざと言った。「綺麗じゃない」

蘇千瓷は不機嫌になり、口を尖らせて足で蹴った。「どいて」

厲司承は瞳に笑みを含み、彼女に身を寄せ、ゆっくりとした声で言った。「綺麗じゃないのに俺を魅了して、もっと綺麗だったら天にでも昇るつもりか？」そう言いながら、キスしようと近づいた。

蘇千瓷は心が蜜のように甘くなっていたが、彼がキスしようとした時、顔をそらし、彼を押しのけて甘えた声で言った。「お酒の臭いがすごいわ、お風呂に入って」

「一回だけキスしてから行く」そう言いながら彼女の顔に向かって迫った。

蘇千瓷は再び避け、手で彼の顔を押さえた。「お風呂に入らないとキスさせない」

「はぁ」厲司承は少し不満そうだったが、それでも立ち上がって「わかった」と言った。

厲司承がゆっくりと立ち上がるのを見て、蘇千瓷は手を離した。

しかし思いがけず、厲司承は突然また彼女に覆いかぶさり、彼女の頬にちゅっとキスをして、やっと満足げに立ち上がった。

蘇千瓷は嫌そうに頬を拭いながら、むっとしてベッドにうつ伏せになった。

でも心の中では、密かに動揺を抑えられなかった。

突然携帯が鳴り、蘇千瓷は手に取った。羅戰からだった。

【Z】：陸亦寒はどこ？

【千千蘇辭】：わからない、多分部屋にいるんじゃない？709を見てみて

【Z】：OK

……

蘇千瓷が言った部屋番号に向かいながら、羅戰は何故か緊張を感じていた。