第770話：彼の口から、煙を吸う

「ああ……そうか」羅戦はすぐに話題が見つからなくなった。

気まずさ、後ろめたさ、不安。

陸亦寒は自分が彼にキスしたことを知っているのだろうか、それとも知らないのだろうか？

陸亦寒は彼のその様子を見て、体を起こし、枕を抱きながら尋ねた。「何か話したいことがあるのか？」

「ない……」

「ちっ、お前はいつも何か頼みごとがある時はこんな犬みたいな態度をとるんだ。誰を騙すつもりだ？」陸亦寒は彼を蹴って、「早く言えよ！」

羅戦：「……」

陸亦寒は少し待ったが、羅戦がまだ話さないのを見て、いらだたしげに枕を彼の顔に投げつけ、すぐにベッドに倒れ込んで、怒った声で言った。「話すことがないなら早く出て行け！俺は死ぬほど眠い！」

羅戦は目を伏せて、口を開いた。「母が彼女を作れって言うんだ。お見合い相手を紹介されて、結構可愛いんだ」

陸亦寒は枕を取り除き、何か不思議な感覚を覚えた。

羅戦が、彼女を作るのか？

数日前なら、陸亦寒は間違いなく容赦なく彼を嘲笑っただろう：お前のようなビビリが彼女を作れるのか？

あるいは：どこのお嬢さんが目が見えなくなってお前を好きになるんだ？

しかし今は……

陸亦寒は少し戸惑った後、言った。「それはいいじゃないか。気に入らないのか？」

「気に入ってる」羅戦は躊躇なく答えた。「だから引っ越すんだ。帰ったら引っ越して、その子が住んでいる所に行く」

「まさか」陸亦寒は急に体を起こし、驚いた表情で、「どれくらい付き合ってるんだ？もう同棲するのか？」

「違う、一時的な滞在だよ。彼女は俺が男と一緒に住んでるのを知って、少し不便だと思ったから……」

「ああ……」陸亦寒は言葉に詰まり、なんとも言えない複雑な気持ちになった。

お見合い相手？

男と一緒に住むのが不便？

誰を騙すつもりだ？

羅戦はそんな、誰かに誘われただけで簡単に同棲するような人間じゃない。

しかし陸亦寒はそれを指摘せず、しばらくして再び口を開いた。「おめでとう」

羅戦は何か居心地の悪さを感じ、彼の方を向いた。

陸亦寒は少し疲れた様子で、両手を後ろのベッドについて、だらしない感じだった。

「陸亦寒、俺は多分……」

俺は多分お前のことが好きになってしまった。

俺は多分……男を好きになってしまった。

陸亦寒は興味深そうに彼を見て、少し困惑した様子だった。