顧靖澤も思いがけなかったが、彼女が着替えているところに出くわしてしまった。
林澈が慌てて身を隠すのを見て、彼の眉間の皺がさらに深くなった。その眉間の小さな山は、長年凍り付いた氷山のように、林澈を見つめながら、冷たい光を放っていた。
林澈は唇を引き締めて、ドアの所にいる顧靖澤に向かって言った。「なぜ入ってきたの?」
顧靖澤は目をそらしながら中に入って来て、「ここは私の家だ」と言った。
「……」
林澈は知っていた。ここが彼の家だということを、彼女は誰よりもよく分かっていた。
彼を力強く見つめた後、彼女は服を掴んで、数歩でバスルームに駆け込んだ。
ドアを閉めると、彼女は自分の両足を広げ、椅子に座って、自分で薬を塗ろうとした。
医者から処方された薬は七日分あった。彼女はそんな私的な部分を他人に見られるのが苦手で、実は医者に見られるのでさえ違和感があったので、使用人に薬を塗ってもらうなんてもっとありえなかった。洗った後、彼女はそこに座って薬箱を開けたが、見えないため、どこに塗ればいいのか分からず戸惑っていた。そのため、長い時間がかかり、外に出ることもできなかった。
外では。
顧靖澤がそこに立って、中から物を洗う音や薬箱を開ける音を聞いていた。その後は音が途絶えた。
長い時間が経っても彼女が出てこないことに、顧靖澤は次第に焦り始めた。
ドアの前に立ち、数歩進んでは戻り、ドアをノックしようとして伸ばした手を引っ込めた。
目を閉じて、何を心配しているのかと思った。どうせ彼女は彼を必要としていないのだから。
しかしその時、中から突然、林澈の「シッ」という低い呻き声が聞こえた。
顧靖澤の目が止まり、もう躊躇することなく、ドアを押し開けて中に入った。
中では、林澈が革の椅子に座り、足を開いて、自分で綿棒を持って薬を塗っていた。しかし薬液が塗られると冷たい感覚があり、不快に感じて思わず「シッ」と声を漏らしてしまった。
しかし、顧靖澤が突然入ってくるとは思わなかった。
林澈は一瞬固まり、顧靖澤を見上げて、呆然としたまま、しばらく反応できなかった。
状況を理解したとき、林澈はやっと叫んだ。「あなた...誰が入っていいって言ったの!」林澈は急いで両足を閉じ、下に何も着ていないことを思い出し、すぐ横のバスタオルを取って自分を覆った。