林澈は急いで警備員に通すように言い、楊凌昕を見て、「どうしてここに来たの?」と尋ねた。
楊凌昕は「澈さん、物をなくしてしまって申し訳ありません」と言った。
「ああ、あれね。大丈夫よ、コピーがないか探してもらうから」
「違うんです。私、とても責任を感じて、あちこち探してみたんです。半晩かけて、ようやく会社で見つけました」
林澈は一瞬驚いた。
楊凌昕がこんなに一生懸命探して、今も汗だくの様子を見て、急いで中に入るように促した。
「まずは中に入って。汗だくじゃない。何か飲み物でも飲みましょう」
楊凌昕は中に入り、この場所を見回した。初めてではないが、やはり圧倒される思いだった。
高価な床を踏みながら、林澈に「靴が汚れているので、履き替えたほうがいいですね。このカーペット、とても良さそうですから」と言った。
林澈は足元を見て「大丈夫よ、ただのカーペットだもの。踏むためにあるんだから。座って」
彼女は顔を上げ、使用人に水を持ってくるように言った。
楊凌昕は使用人がお茶を持ってくる様子を見て、林澈に対する態度が非常に恭しいのを見て、とても凄いと感じた。
楊凌昕は「澈さん、皆さんあなたのことをとても尊敬しているんですね」と言った。
林澈は見て「彼らは素質の高いプロフェッショナルだから、当然そうなるわ」と言った。
「彼らは顧家の下人なんですか?」
「もちろん違うわ。今時、上の人下の人なんて区別はないでしょう。雇われている人たち、働いている人たちよ」
「ああ、そうですね。私ったら、まるで古い時代みたいに考えちゃって。下人なんて言って。家政婦さんって言うべきでしたね」
「うん、まあそんな感じね」ただ、顧家の使用人たちは、外の人とは違って、より親密で忠実だった。
おそらく顧家が何らかの方法で、彼女たちをこのように忠実にさせているのだろう。
人心を掌握すること、それは林澈には不得手だった。
この時、顧靖澤も中から出てきた。
彼は、一体誰が自分と林澈の良い時を邪魔したのか見たかったのだ。
しかし、楊凌昕は顧靖澤を見るなり立ち上がり、「顧さん、申し訳ありません。お邪魔して。澈さんに物をお届けに来ただけです」
顧靖澤は彼女を一瞥し、冷淡に「ふん」と声を出した。
林澈は「そうそう、持ってきてくれた物はどこ?」と言った。