第520章 林澈は本当についてない

林澈は本当に嫌な目に遭ったと感じた。

何の理由もなく車に乗せられ、そのまま小さな居酒屋に連れて行かれた。

林澈は車から降り、酔っ払った男を押しのけて、急いで逃げ出した。

「おい、お嬢ちゃん、どこに逃げるんだ、逃げないでよ……」

その男は追いかけようとしたが、おそらく酔いが回ってきたのか、数歩も歩かないうちに転んでしまった。

居酒屋の人々は、こんな酔っ払いたちが車を運転していたのを見て、急いで警察に通報しに行った。

林澈が振り返って見たとき、誰かが酔っ払いたちを引き止めに行くのが見えた。

やっと安心して、速度を緩めたが、それでも小走りで進み続けた。

しばらく走った後、彼女は立ち止まり、息を切らしながら、自分の胸を叩いた。

なぜこんな人たちに出会ってしまったのか、神のみぞ知る。

ここは文化的に開放的で、のんびりした人々がワインを飲みながらふらふらと人生を楽しむことが多いが、林澈はいつも顧靖澤と一緒にいたため、外の人々と出会うことはなかった。

今、外に立っていると、携帯電話も持っていないし、お金もないことに気づいた。顧靖澤に電話をするために誰かの携帯を借りようとしても相手が見つからず、一人に声をかけようとしたが、舌がもつれ、学んだ英語をすべて頭の中で確認してみると、「ありがとう」と「私の名前は〇〇です」と「はい・いいえ」しか言えないことに気づいた。

本当に後悔した。なぜ英語やフランス語をちゃんと勉強しておかなかったのか。

きっと顧靖澤に頼りすぎていたからだ。

林澈は道端に立って見ていた。ここは観光が盛んな地域ではなく、普段は道で1、2人の中国人に会うこともあるが、今日は見慣れた顔を探そうとしても、とても難しく感じた。

そこに立って長い間見ていたが、一人も見かけなかった。

本当に、欲しいものがあるときは、限って見つからないものだ。

中国人に会いたくないときは、どこにでもいるのに。

林澈はそこに立って長い間見ていた。この近くに警察署があるか、警察署までどう行けばいいのか聞きたかった。

ここは居酒屋通りのようで、朝はかなり閑散としており、道では一晩中飲んでいた人々がよろよろと歩いているのが見えた。

林澈が一人でそこにいるのを見た人々が、何度か話しかけようとしてきた。