林澈は顧靖澤と一緒に車で会社に向かった。
車を降りると、顧靖澤は社長専用エレベーターで上がっていった。
最上階に着くと、林澈はすぐに言った。「あなたはお仕事して、私は王子さまを隣の会議室に連れて行きますね。」
顧靖澤は林澈を見つめ、彼女を引き寄せた。「ここにいなさい。」
「えっ……じゃあ王子さまは?」
顧靖澤は直接呼びかけた。「秦浩。」
秦浩が入ってきて言った。「社長、奥様。」
顧靖澤は犬を引っ張って彼に投げた。「これの面倒を見てくれ。」
「……」秦浩は手の中の犬を見て、困惑した表情を浮かべ、心の中で思った。なんだよ、犬の世話なんて……
私はペンシルベニア大学の修士卒業生で……
顧氏グループの上級アシスタントなのに……
しかし、秦浩は顧靖澤の鋭い表情を見て、急いで犬をしっかりと受け取った。
「はい、社長、奥様。ご安心ください。私が面倒を見ます。必ずしっかりと世話をいたします。」
林澈は言った。「あっ……じゃあ私は何をすればいいの?」
顧靖澤は彼女を引っ張って、「こっちに来なさい。」
彼女は顧靖澤に引っ張られ、反応する間もなく、彼が大きな椅子に座り、すぐに林澈は彼の膝の上に座らされた。
林澈はそこに座り、慌てて彼を叩きながら言った。「何するの、何するの。」
秦浩がまだここにいるのに。
秦浩はちらっと見ただけで、すぐに顔を背けた。心の中で思った。まずいまずい、そして急いで犬を抱えて出て行った。これ以上ここにいたら、目が潰れてしまいそうだ。
部屋には二人だけが残された。
林澈は顧靖澤を見て、「私がここにいたら、どうやって仕事するの?」
「お前が静かに何か見ていれば、邪魔にはならない。」彼は言った。「時々下を向いて見るのも、いい気分転換になる。」
「……」
そうね、彼が下を向けば、彼女の胸元の艶やかさが丁度見えるのだから。
林澈はそこに座り、彼がタブレットを渡すのを見た。
彼女は仕方なく口を尖らせ、ドラマを開いて見始めた。
イヤホンをしているので、何を見ても彼の邪魔にはならない。
以前から家の書斎でも、彼らはこうだった。一人がドラマを見て、一人が仕事をする。
ただし今は彼女が彼の膝の上に座っている……
林澈は彼がどうやって仕事ができるのか不思議に思った。