彼女は目を動かし、林澈がなぜ外出する時に人を連れているのかと思ったが、まさか大統領親衛が来ているとは思わなかった。
当然のことだが、大統領夫人が外出する時は親衛兵を連れていく必要がある。そうでないと、何か問題が起きれば国家の大事になってしまう。
ただ、莫惠苓は忘れていた。今や林澈は大統領夫人とも親友なのだ。
まさか、今の林澈が大統領親衛の保護を受けられるようになるとは。
外出時の威厳はどれほどのものだろうか。
莫惠苓はこのような威厳を味わったことがない。
俞閔閔は親衛兵を見て、「彼女を近づけないように」と言った。
そして、林澈に「先に行きましょうか」と声をかけた。
林澈は頷いて、「はい」と答えた。
二人は別の場所へ向かい、莫惠苓は罵りたかったが、これらの大統領親衛を見て……
本当に敵に回す勇気がなかった。
これらの人々は皆戦場から来た者たちで、一人一人が冷酷無比で、琉璃宮の命令のみに従い、國家安全局に任命されている。一般人が敵に回せる相手ではない。
莫惠苓は林澈と俞閔閔の二人がこの別荘地区を散歩するのを見ているしかなかった。
後ろには大統領親衛が静かに付き従い、遠すぎず近すぎない距離で見守っている。
彼女は忘れていた。今の林澈は以前とは全く違う。昔は権力も地位もない小人物だったが、今は彼女の周りにもこのような後ろ盾ができたのだ。
——
林澈は俞閔閔を見送った後、家に戻ると、使用人が裏庭で犬を洗っていた。
林澈は近づいて笑いながら、「あら、王子さまがお風呂中なのね」と言った。
王子さまは彼女を見るなり、興奮して近寄ろうとした。
林澈は急いで近づき、「動かないで、動かないで。きれいに洗ってからね」と言った。
使用人は笑って、「奥様を見て喜んでいるんですよ」と言った。
林澈はしゃがんで一緒に王子さまを洗おうとした。
使用人は止めようとして、「奥様、どうぞ離れていてください。お洋服が汚れてしまいます。私たちにやらせてください。もう少しで終わりますから」と言った。
林澈は自分の服を見て、かなり高価そうだと思った。値段は見ていないが、顧家の執事が買うものは安物ではないはずだ。