第599章 大統領夫人が私に密かな恋心を抱いているのは分かっていた

彼女は実際、夫がこれほど優しく妻を扱うような結婚生活について聞いたことがなかった。

物語の中で、妻が自立できず、夫が半生を介護したという話を聞くと、確かに感動的だ。

しかし、顧靖澤のように、妻が自分でできることなのに、まるで子供のように世話をする、そんな夫婦の姿こそが心温まるものだった。

まるでサトウキビを食べたかのように甘い。

苦難の時には人の熱い愛情が表れるが、平穏な日々にこそ、本当の心が見えるのだろう。

顧靖澤を見つめながら、彼女はそう考えずにはいられなかった。

顧靖澤は彼女の濡れた髪に触れ、ドライヤーを持ってきて、優しく髪をとかしながら、上から乾かし始めた。

「やめてください...」林澈は言った。「誰かに聞かれたら、きっと笑われてしまいます。」

「笑われる?」

「そうですよ、顧會長が人の世話をするなんて...」

「お前は他人じゃない」顧靖澤は言った。

林澈の心が甘く温かくなり、ドライヤーからの暖かい風を感じながら、「でも...私、恥ずかしいです」

「なぜ恥ずかしい?」

「それは...」林澈はうまく説明できず、ただ、彼がこうして世話をしてくれることが、自分にとってあまりにも申し訳なく感じた。

多忙を極める會長が、帰宅後もこうして彼女の世話をするなんて。

外では。

莫惠苓は顧靖澤が戻ってきてから近づこうとしたが、顧靖澤が直接林澈と寄り添い、二人の親密な様子は、まさに目に痛かった。

しかし、莫惠苓は今の林澈がこれほど傲慢になり、顧靖澤に入浴の世話までさせ、抱きかかえて出入りさせるとは思わなかった...

本当に厚かましい!

顧靖澤がこれまで誰かをこんなふうに世話したことなどあっただろうか?

彼女は顧靖澤が顧家の権力者だということを知っているのだろうか?

顧靖澤にこんな扱いをさせるなんて、本当に許せない...

莫惠苓は怒りと心の痛みを感じながら、顧靖澤の情けなさにも呆れた。

彼が林澈にこれほど優しくするなんて...以前自分と一緒にいた時は、こんなふうに世話なんてしてくれなかったのに。

彼女は長い間黙って見ていてから立ち去り、顧闌珊に電話でこれらのことを話した。