第601章 自分で逃げ出したのか

鹿允詩は少し警戒心を持っていたものの、まだ何も経験していない彼女は、エリックの保護の下で育ってきたため、何かあっても誰かが助けてくれると思い、そのため無防備になっていた。反抗心を持ち始めたC国に来てからは、少しスリルを求めていたので、このイケメンに興味を持ち、そのまま付いて行ってしまった。

林澈が台本を読んで演技の練習をしているところに、スタッフが慌てて駆け寄ってきて、恐る恐る言った。「澈さん...ちょっと問題が...」

入り口で気付かなかったが、鹿允詩の姿が見えなくなっていた。彼はようやく恐れを感じ始めた。これは林澈を怒らせることになる。この作品の主演女優で、こんな大スターを怒らせたら、自分の将来はここで終わりだと思った。

林澈はまだ何が起きたのか分からず、来た人を見て「何があったの?」と聞いた。

「お連れの女の子が...いなくなってしまいました...」

林澈は一瞬固まった。「允詩?」

「はい...」

林澈は急いで立ち上がり、現場を確認しに行くと、確かに人影はなかった。すぐに外に出て尋ねると、顧靖澤のボディーガードがまだいたので、彼らにも話して一緒に探してもらった。

調べた後、ボディーガードは彼女に報告した。「奥様、アニーさまは窓から出て行ったようです。誰かが小姐を連れ去った形跡はなく、抵抗した痕跡もありません。」

林澈は疑問を持って言った。「彼女が自分で出て行ったの?でもどうして...」

「奥様、外で誰かが小姐を騙したか、小姐が自分で遊びに行きたくて抜け出したのかもしれません。」

林澈は額を押さえながら、まず最初に彼女の安全を心配した。まだ12歳の少女が外で何か危害を受けないかと心配だった。

彼女は急いで「まず顧靖澤に知らせて。」と言った。

顧靖澤は知らされるとすぐに電話をかけてきた。

「心配しないで、林澈。人を出して探させる。エリックは国内に敵がいないから、大きな危険はないはずだ。」

林澈は言った。「でもエリックはとても有名だから、誰かが彼の娘だと知って悪いことを考えるんじゃないかと心配です。」

「安心して、彼女が自分で出て行ったなら、普通の誘拐犯ではないはずだ。それに彼女が自分で抜け出したのかどうかもまだ分からない。あまり心配しても仕方がないだろう。」