しかし今は、もうそうではなくなった。
家に誰かが待っていると思うだけで、早く仕事を終えて、新婚の妻のもとへ帰りたくなるのだ。
仕事がどれほど重要でも、彼女ほど大切なものはない。
そのくらいのことは、彼にもわかっていた。
おばあさまは再び名残惜しそうに喬綿綿の手を取り、何度も優しくその手の甲を撫でながら言った。「綿綿や、司くんはね、仕事に没頭すると昼も夜もわからなくなってしまうの。これからはあなたが彼をよく見ていて、あまり無理をさせないようにしてね。」
「以前は彼も独身で、心に掛かりもなかったから、仕事が全てだったのよ。これからはあなたがいるから、おばあさんもようやく彼のことを心配しなくて済むわ。」
「あなたたちは今、司くんと結婚証明書も取得したし、両親にも会ったわね。結婚式をいつ挙げるか考えたことはある?近いうちに挙げる予定なら、おばあさんが風水師を早めに探して、良い日取りを見てもらえるわよ。」
おばあさまが突然結婚式の話を持ち出したので、喬綿綿は少し返答に困った。
彼女は数秒間呆然とし、口を開いた。「あの、おばあさま、私たち……」
「おばあさま、結婚式は今のところ急ぎません。」
墨夜司は彼女の手のひらを軽く握り、彼女の窮地を救った。「綿綿はまだ学生なので、早急に結婚式を挙げる予定はありません。この件は、彼女が卒業してからにしましょう。」
喬綿綿はすぐに感謝の眼差しを彼に向けた。
彼が適時に助け舟を出してくれて本当に良かった。さもなければ、彼女は何と答えればいいのかわからなかっただろう。
彼女は今、結婚式のことなど考えていなかった。
まだ20歳にもなっていない彼女は、結婚したことを早々に人に知られたくなかった。
特に卒業する前には。
墨夜司と結婚することは恥ずかしいことではなく、むしろ彼の条件なら、彼と結婚したいと思う女性は数え切れないほどいるだろう。しかし、こんなに早く結婚したことを人に知られるのは、あまり良くないと彼女は感じていた。
薑洛離とはあれほど仲が良いのに、結婚のことを彼女にさえ話していなかった。
結局のところ、かつて彼女は自分がキャリアウーマンだと豪語し、キャリアを築くまでは絶対に結婚を考えないと言っていたのだから。