第312章 だんな、抱きしめて！

墨夜司：二人きりのデートだと思っていたのに。

　　喬綿綿は彼が気にしていることを知っていたので、笑いをこらえて返事をした：私たち毎日会っているでしょう、これからは二人きりでデートする時間はたくさんあるわ。そんなにケチケチしないでよ。

　　今回、墨夜司はすぐに返事をしなかった。

　　およそ1分ほど経ってから、ようやく一文字だけ返信した：わかった。

　　喬綿綿は彼の返した「わかった」という文字を見て、彼がおとなしく素直にこの文字を打っている姿を思い浮かべ、とてもかわいいと感じた。

　　彼女は返信欄からとてもかわいい絵文字を見つけ出し、彼に送った。

　　*

　　墨夜司が喬綿綿からその絵文字を受け取ったとき、すでに車の中にいた。

　　彼がその絵文字を受け取った瞬間、ただひとつのことしか考えられなかった。

　　それは喬綿綿をベッドに連れ込んで激しく求めることだった。

　　彼女を自分の下で震えて泣かせるほどの激しさで求めることだった。

　　あの夜のように、彼女を泣きながら懇願させ、彼の下でピンク色の柔らかなバラのように開花させることだった。

　　彼女が猫が人の腕を抱きしめている画像を送ってきたのだが、それだけではなく、重要なのはその画像に添えられた文章だった：だんな、抱きしめて！

　　墨夜司は「だんな」というこの二文字を何度も何度も見つめ、喬綿綿がこう呼ぶときの声がどれほど柔らかく甘美なものかを想像すると、身体がそのように反応してしまった。

　　彼は「昂ぶった」ある部分を見下ろし、深い瞳の奥底に欲望が渦巻いた。

　　「小悪魔め！」彼は歯を食いしばって深く息を吸い、なかなか収まらないその部分を見つめ、そばにあった薄い毛布をその上にかけた。

　　もう少し我慢だ。

　　彼女のあの忌々しい生理が終わったら、その時こそ、元金も利子も含めて取り返してやる。

　　彼は彼女を泣かせて再び懇願させるつもりだった。

　　車は少し走った。

　　ある花屋の前を通り過ぎるとき、墨夜司は魏徵に車を止めるよう指示した。

　　魏徵が車を停めると、外を見て、向かいに花屋があるのを見て、墨夜司が何をしたいのかを察した。

　　「墨社長、どんな花をお買いになりたいかおっしゃってください。私が買ってまいります。」