「はい。」
喬綿綿は言い終わると、向きを変えて出て行った。
「姉さん。」
ドアのところまで来ると、喬宸はためらいながら彼女を呼んだ。
「うん?何かあるの?」彼女は足を止め、振り返って喬宸を見た。
喬宸はまた数秒ためらってから、心配そうな顔で言った。「沈馨のあのお姉さん、姉さんの旦那とすごく親しいの?」
喬綿綿は一瞬驚いた。「宸宸、急にどうしてそんなことを聞くの?」
彼女は喬宸のことをよく知っていた。きっと理由もなくこのことを聞くはずがない、何か言いたいことがあるに違いない。
「姉さん。」喬宸は沈柔のことを思い出し、表情が冷たくなった。「彼女に気をつけて。僕は...彼女が姉さんの旦那に良くない考えを持っていると思う。」
喬宸自身は恋愛経験がないが、学校ではトップクラスの人気者で、彼を慕う女の子はたくさんいた。女の子が男の子を好きになったときにどんな目つきをするか、彼はよく知っていた。
憧れの眼差しを、彼はあまりにも多く見てきた。
彼は沈柔が次の喬安心になることを望んでいなかった。
姉の旦那を奪われるなんて。
彼はこの義理の兄がかなり良い人だと思っていて、そんなひどいことをする人ではないと思っていた。
でも、あの頃の蘇澤も良い人だと思っていた。
それなのに結局は...
喬綿綿は彼の真剣な表情を見て、少し驚いたが、すぐに唇の端を曲げてうなずいた。「うん、わかったわ。」
「姉さん、本当だよ...」喬宸は彼女が気にしていないのではないかと心配になり、真剣な口調でもう一度強調した。「彼女は絶対に姉さんの旦那のことが好きだよ。あなたと姉さんの旦那が結婚したって知って、心の中で嫉妬しているんだ。絶対にまた馬鹿みたいに、敵を味方だと思わないでよ。」
喬宸は沈柔が好きではなかったが、沈柔がとてもきれいだとも思っていた。
それも男の子が好きになるようなきれいさだった。
顔も良くて、スタイルも良くて、雰囲気も良くて、服装やメイクもおしゃれで見ていて飽きない。
喬安心と比べたら、何段階も上だった。
姉さんもとてもきれいで、沈柔に劣らないけど、男が浮気するときは顔だけを見るわけじゃない。