第360章 彼女はもう私につきまとわないはずです

「医者は、幸せで楽しい気持ちを保つことがあなたの体にとてもいいと言っているわ。お姉ちゃんはあなたがずっと幸せでいてほしいの。あまり悩まないでね。」

喬宸はハッとして、視線を戻した。

彼は振り返り、隣で彼と運命を共にしている姉を見つめた。突然心の中が酸っぱくなり、目に涙が浮かび、詰まった声で言った。「姉さん、わざと隠していたわけじゃないんだ。自分で上手く処理できると思って、言う必要はないと思ったんだ。」

「僕と沈馨は...」涙で濡れた小さな顔が脳裏に浮かび、喬宸は心臓に軽い痛みを感じた。「彼女は僕と同じクラスの同級生で、隣の席なんだ。彼女は僕のことが好きだと言って、僕を追いかけて、僕に彼女の彼氏になってほしいと言ったんだ。」

「僕は何度も断ったよ。」

「彼女は今日が誕生日だって言って、クラスの多くの同級生がそのレストランに彼女の誕生日を祝いに行くって。だから、僕も行ったんだ。」

喬綿綿は聞いて頷いた。

大体どういう状況かわかった。

つまり、喬宸が沈馨と単独で食事をしたわけではなく、沈馨に騙されて行ったのだ。

「姉さん、安心して。僕は早恋しないよ。」喬宸は言い終わると、深く息を吸い、喬綿綿の心配そうな目を見つめ、唇の端から少し笑みを浮かべた。「今日彼女にはっきり言ったから、彼女はもう僕にまとわりつかないはずだ。」

「僕はしっかり勉強して、いい大学に入るよ。こんなことで影響を受けたりしない。」

喬綿綿は彼のこの強がった笑顔を見て、とても心が痛んだ。

自分の弟のことを、彼女が理解していないわけがない。

喬宸は最初は本当に沈馨のことが好きではなかったのかもしれない。

ただ、女性が男性を追いかけるのは簡単なことで、沈馨はあんなにかわいらしい女の子で、何年も熱心に追いかけてきたのだから、喬宸が初心を保ち、彼女に心を動かされないのは難しかっただろう。

もし本当に全く気にしていないのなら、彼は今のような状態にはならなかっただろう。

喬綿綿は彼を慰める言葉を言いたかったが、何を言えばいいかわからなかった。

いくつかのことは彼女にはわかっていたが、口に出すのもよくなかった。

彼女にとっては、今のような結果も良しとすべきだろう。

沈柔の喬宸に対する態度を見れば、沈家の門閥意識がとても強いことがわかる。

今の喬家は、沈家が絶対に見下すような存在だ。