第376章 もう良くならないのか！

店員がバッグを取りに行っている間、喬綿綿はカメラを開き、手にしているバッグの写真を撮った。

　　撮り終わると、彼女はWeChatを開き、薑洛離に見せるために送ろうとした。

　　まだ送信していないうちに、突然甘ったるい声が聞こえた。「あら、あのバッグ素敵ね。私、あのバッグが欲しい。」

　　ハイヒールの音が彼女に近づいてきた。

　　喬綿綿は背後から漂ってくる甘ったるい香りを嗅ぎ、その甘えた声が再び耳元で響いた。「宮さま、このバッグが欲しいの。このバッグ買ってちょうだい。」

　　後ろの女性が喬綿綿の手にあるバッグを指さし、隣の男性に甘えて駄々をこねた。

　　宮さま？

　　喬綿綿はこの呼び方を聞いて、思わず眉をひそめた。

　　宮という姓はあまり一般的ではない。

　　宮姓の人はかなり少ない。

　　喬綿綿は宮澤離という人物が大嫌いなので、この「宮さま」という声を聞いた途端、宮澤離のあの女々しくて憎らしい顔が頭に浮かんだ。

　　彼女が振り向いて、この「宮さま」がどんな顔をしているのか見ようとした瞬間、見覚えのある声が背後で響いた。「そのバッグを彼女のために包んでください。」

　　「わあ、宮さま、素敵！」

　　「大好き、大好き。」

　　女性は歓声を上げ、声はますます甘ったるく、ますます甘えた調子になった。

　　甘えた声に喬綿綿は鳥肌が立った。

　　宮さまの声を聞いた後、彼女の表情が変わり、眉をさらにひそめた。

　　この宮さまは、まさに彼女の知っているあの宮さまだった。

　　喬綿綿は今日の運が本当に悪く、とても不運だと感じ、外出するべきではなかったと思った。

　　朝のオーディションで喬安心に会い、昼食で沈柔に会い、夜に買い物に出かけたら、さらに宮澤離にも会うなんて！

　　これは何という運の悪さだろう。

　　雲城はこんなに大きいのに、なぜか朝昼晩と、彼女は見たくない人に出会ってしまう。

　　もうこれ以上どうしようもない！

　　喬綿綿は眉をひそめて顔を上げると、視線が宮澤離の彼女を見つめる目と合った。

　　目が合った瞬間、二人の表情はともに沈んだ。

　　宮澤離の表情はもともとあまり良くなかった。

　　喬綿綿を見たとき、さらに暗くなった。

　　彼の目に浮かぶ光には、少しの善意もなく、喬綿綿を見る目つきは冷たく、鋭かった。