今この瞬間、喬綿綿はただ早く立ち去りたかった。
彼女は宮澤離がまだ自分を見ていることを知っていた。
しかし彼女は見えないふりをした。
「はい、お嬢様」
店員は彼女の言葉を聞いて、思わずほっとした。
幸いこのバッグは他の色もあった。
さもなければ、この二人の客がもしバッグ一つで争い始めたら、頭が痛くなるところだった。
宮さまの方は絶対に怒らせるわけにはいかない。
そしてもう一人の客に付き添っている男性客も、身分が並々ならぬ様子で、軽々しく怒らせるわけにはいかない人物のようだった。
今のような解決方法が、最も完璧だった。
「林さん、宮さま、少々お待ちください。すぐにこのバッグを包装いたします」店員は喬綿綿が置いた黒いバッグを取り上げ、レジの方へ包装と精算に向かおうとした。