「本来なら、私を助ける義務なんてないのよ。私たち...ただの友達だもの」
「分かってるわ、全部分かってる。助けてくれなくても、理解できるわ」
「柔柔、私に嘘をついたことある?」宮澤離は審査するような目で、あの夜のことを一つ一つ思い出しながら、人生で初めて、あの夜の出来事に疑問を抱いた。
いや、初めてではなかった。
以前にも、疑ったことがあった。
でも、それは一瞬の疑いで、すぐに考えすぎだと思った。
あの夜、もし沈柔が彼を救わなかったら、誰が救ったというのだろう。
意識を取り戻した時、周りの人々は皆、沈柔が彼を救ったと言っていた。
沈柔自身もそれを認めていた。
もし彼女でなければ、なぜ嘘をつく必要があるのか?
彼女に嘘をつく理由なんてあるのか?
しかし、なぜか分からないが、あの夜の人は沈柔ではなかったかもしれないという感覚が彼にはあった。