第575章 だんなと呼んで

彼女は、彼がその時故意にやったと思っていた。

普段は冷たく禁欲的な様子で、真面目すぎるほど真面目なのに、そういう時になると、男の劣根性が完全に露わになるのだ。

やっぱり……

男の言葉なんて当てにならない、豚が木に登るようなものだ。

「墨夜司、触らないで……」

喬綿綿が言葉を言い終える前に、背後の男に強引に抱きしめられた。

彼は彼女の体を押さえ、彼女を自分の方へ向かせ、素早く彼女の手を見つけ、その白くて柔らかい小さな手を優しく握った。

長く力強い指が彼女の手のひらを適度な力加減でゆっくりと揉みしだいた。

喉から低い笑い声を漏らし、彼女を見上げると、漆黒で深い瞳にも浅い笑みを浮かべ、逞しい腕で彼女の細くて柔らかい腰を強引に抱き寄せながら、強引な言葉を口にした：「俺はお前のだんなで、お前は俺の嫁だ。俺に触らせないなら、誰に触らせたいんだ？」

「それとも、お前のだんなに誰を触らせたいのか？」

喬綿綿：「……墨夜司、あなた……」

「だんなって呼べ。」

「……」

彼女の腰に回した腕がさらに強く締め付け、男の深い瞳の奥に強い感情が流れ、彼女をじっと見つめながら、一言一句、まるで命令するように：「ベイビー、だんなって呼んで。」

「今日、俺のオフィスで沈柔と話してた時は、自然に呼べてたじゃないか？」

「もう一度聞かせてくれないか？ん？」

喬綿綿：「……」

彼女の顔が熱くなり、心臓の鼓動も早くなった。

あの時と今とは、同じではない。

その時は、彼が外で盗み聞きしているなんて知らなかった。

知っていたら、あの「だんな」という言葉は絶対に口に出せなかっただろう。

今、目の前で彼をそう呼ぶなんて、どうやって……恥ずかしくて言えない。

確かに、彼らは夫婦で間違いないし、彼が彼女のだんなであることも間違いない。

でも、目の前で「だんな」なんて呼ぶのは、すごく恥ずかしい。

「呼びたくないのか？」墨夜司は目を細め、彼女の腰に回していた腕を突然上へ移動させ、熱い息を含んだ大きな手が危険な場所へと向かい、声も急に暗く沈んだ、「俺がまだ十分可愛がってないと思ってるのか？そうなら、もっと可愛がってやるしかないな。」

その熱い大きな手がますます不規則に動き始めるのを感じ、喬綿綿の表情が一変した。

彼女は急いで墨夜司の手を押さえた。