第511章 まさか、墨社長がこんな人だとは思わなかった

喬綿綿「……」

*

オフィスの外。

魏徵は墨夜司から電話を受け、すぐに商店街へ女性用の服一式を買いに行くように言われた時、彼の表情は何とも言えないものだった。

先ほど、数人の女性秘書たちが墨社長と若奥様のことについて囁き合っているのを聞いた時、彼はとても荒唐無稽だと感じていた。

そんなことはありえないと思っていた。

これは全く墨社長のやり方ではなかった。

言ぼっちゃんがこのようなことをするのなら、むしろ普通だと思える。

結局、言ぼっちゃんは元々荒唐無稽な行動をする人で、これ以上の突飛な行動も少なくなかった。

しかし、彼らの墨社長がそんなことをするはずがない。

墨社長が特に正直な人間だというわけではないが、彼の墨社長に対する理解では、このことは墨社長にとってはあまりにも荒唐無稽すぎた。

それに、墨社長の自制心がそんなに低いはずがない。

だから、数人の女性秘書たちがそのように話しているのを聞いた時、彼は厳しい表情で彼女たちを叱りつけた。

女性秘書たちは怖がって「魏徵お兄さん」と連呼し、二度とこんな噂を広めないと誓い、絶対に墨夜司にこのことを告げないでほしいと懇願した。

さもなければ、彼女たちは終わりだと。

彼は腹が立ったものの、もちろん墨夜司に告げるつもりはなかった。

墨社長の性格からすれば、これらの女性秘書が裏で彼と若奥様のことを噂しているのを知れば、必ず彼女たちを解雇するだろう。

魏徵はこれらの女性秘書たちと普段から仲が良く、そんな冷酷なことはできなかった。

しかし今は……

墨夜司からの電話を受けた後、魏徵は完全に驚愕していた。

世界観が崩壊したような感覚だった。

若奥様が社長室に入った時、服装は何の問題もなかった。

しかし墨社長は新しい服一式を買ってくるように言った。

しかも、下着から全て新しいものを買うように。

若奥様に何が起こったのか、想像に難くなかった。

まさか、墨社長がこんな人だとは思わなかった。

魏徵は墨夜司の普段の冷淡で禁欲的で自制心のある姿を思い出し、今のような放縦な上司の姿と重ね合わせるのが本当に難しかった。

結婚した男性は、皆このように自由奔放になるのだろうか。

墨社長でさえ、例外ではない。

はぁ、墨社長は結婚してから、人柄が随分と変わった。