耳元で、男の声はますます低くなり、欲望に染まった少し掠れた声を帯びていた。
彼女に寄り添う体がますます熱くなるのを感じ、喬綿綿の心臓もますます早く鼓動していた。
「本当に振り向いて私を見ないの?」
しばらくして、喬綿綿は背後の男が諦めたように溜息をついたのを聞いた。「わかった、見たくないなら見なくていい。無理強いはしない。」
言葉が落ちると、男が彼女の腰にきつく巻き付けていた腕が少しずつ緩んでいった。
背後のあの灼熱の支配的な気配も、少しずつ消えていった。
その後、ごそごそという音が聞こえ、約1分後、彼女は後ろから声が聞こえた。「ベイビー、もう振り向いていいよ。服を着替え終わったから。」
なるほど、彼は服を着替えていたのだ。
喬綿綿は疑うことなく、着替え終わったと聞いて振り向いた。
しかし、振り向いた途端、墨夜司が上半身裸で、首には彼女が先ほど買ってきたネクタイを締め、片手でネクタイを引っ張りながら、誘惑的な眼差しで彼女を見つめているのが目に入った。
彼の薄い唇が軽く上がり、口角の弧を描く様子には、普段見られない邪悪さが漂っていた。
喬綿綿は一瞬固まり、我に返ると、顔が「ボッ」と真っ赤に染まった。
目の前の極限まで魅惑的な光景を見つめ、小さな心臓はドキドキと乱れ打ち、顔全体が燃え上がりそうだった。
喉が乾き、口の中も乾いていた……
彼女は口渇を感じながら唾を飲み込み、本来なら視線を逸らすべきなのに、魅惑的な胸筋と腹筋から目を離すことができずに、何度も見つめてしまった。
どうしても……視線を逸らすことができなかった。
彼女はその何個もの性感的で引き締まった筋肉を何度も見つめ、心臓の鼓動はますます速くなり、手も少しコントロールが効かなくなってきた。
墨夜司という男は……体つきが良すぎるではないか。
セクシーすぎて、彼女という女性でさえ血が沸き立つほどだった。
たった今のその瞬間、彼を抱きたいという衝動が強く湧き上がった。
彼が際限なく責め立て、異常なほどの体力の持ち主だと知らなければ、本当に抱いてしまっていただろう。
しかし、何度か彼のある面での異常さを実際に体験した後は、積極的に誘うことはもう怖くなっていた。