彼女を見つめていた男性が、ゆっくりと手を伸ばし、彼女が地面に倒れそうになった瞬間、強い腕が彼女の腰に巻き付き、しっかりと支えて引き上げた。
喬綿綿は彼の腕の中に倒れ込んだ。
本能的に何かを掴もうとした両手は、先ほどから憧れていた胸筋に触れてしまった。
男性の体は熱を帯びていた。
彼女の手のひらが触れたのは、灼けるように熱い肌だった。
彼女が手を押し当てた時、頭上から低い呻き声が聞こえ、腰に回された腕が急に強く締め付けられた。
男性の呼吸が荒くなり始めた。
喬綿綿は感電したかのように、すぐに手を引っ込めた。
慌てて顔を上げると、男性の底知れない暗い瞳と目が合い、彼の目の奥に見覚えのある欲望の色が浮かんでいるのを見て、彼女の足は急に力が抜けた。
彼を押しのけようと手を伸ばした瞬間、両手はしっかりと握られてしまった。
男性は計画通りに、彼女を逃がすはずもなく、彼女の顎を掴んで、深いキスをした。
喬綿綿がソファーに押し付けられ、もう抵抗する力もなくなった時、彼女もついに諦めた。
数分後……
「ちょっと待って……」喬綿綿はキスで夢中になり、大事なことを忘れそうになった。彼女は墨夜司の腕を掴み、息を切らしながら言った。「コ、コンドーム」
彼女は、墨夜司が準備していないと思っていた。
そうすれば、彼を断る理由になるはずだった。
しかし思いがけないことに、男性は彼女がそれを言うと、薄い唇を軽く上げ、それからゆっくりとソファーの端に手を伸ばし、コンドームを取り出した。
喬綿綿:「……」
墨夜司は得意げに眉を上げ、再び身を屈めて、コンドームを彼女の手に押し込んだ。
男性は掠れた声で、セクシーに言った。「ベイビー、開けてくれる?」
喬綿綿の心臓は突然二拍飛ばした。
彼女は手のひらをゆっくりと開き、手に押し込まれたコンドームを見下ろした。
某ブランドのイチゴ味。
サイズは、最大。
*
昼食を食べたのは、それから二時間後のことだった。
外には出なかった。
魏徵がデリバリーを持ってきた。
魏徵がデリバリーをオフィスの外に届け、ドアをノックすると、墨社長が出てきて受け取る際、ちらりと見たところ、墨社長の胸に新しい赤い引っ掻き傷が数本あるのに気付いた。
見たところ、とても新鮮な引っ掻き傷。
明らかについ先ほどついたものだった。