第596章 彼の墨社長は……本当に変わった

彼女を見つめていた男性が、ゆっくりと手を伸ばし、彼女が地面に倒れそうになった瞬間、強い腕が彼女の腰に巻き付き、しっかりと支えて引き上げた。

喬綿綿は彼の腕の中に倒れ込んだ。

本能的に何かを掴もうとした両手は、先ほどから憧れていた胸筋に触れてしまった。

男性の体は熱を帯びていた。

彼女の手のひらが触れたのは、灼けるように熱い肌だった。

彼女が手を押し当てた時、頭上から低い呻き声が聞こえ、腰に回された腕が急に強く締め付けられた。

男性の呼吸が荒くなり始めた。

喬綿綿は感電したかのように、すぐに手を引っ込めた。

慌てて顔を上げると、男性の底知れない暗い瞳と目が合い、彼の目の奥に見覚えのある欲望の色が浮かんでいるのを見て、彼女の足は急に力が抜けた。

彼を押しのけようと手を伸ばした瞬間、両手はしっかりと握られてしまった。

男性は計画通りに、彼女を逃がすはずもなく、彼女の顎を掴んで、深いキスをした。

喬綿綿がソファーに押し付けられ、もう抵抗する力もなくなった時、彼女もついに諦めた。

数分後……

「ちょっと待って……」喬綿綿はキスで夢中になり、大事なことを忘れそうになった。彼女は墨夜司の腕を掴み、息を切らしながら言った。「コ、コンドーム」

彼女は、墨夜司が準備していないと思っていた。

そうすれば、彼を断る理由になるはずだった。

しかし思いがけないことに、男性は彼女がそれを言うと、薄い唇を軽く上げ、それからゆっくりとソファーの端に手を伸ばし、コンドームを取り出した。

喬綿綿:「……」

墨夜司は得意げに眉を上げ、再び身を屈めて、コンドームを彼女の手に押し込んだ。

男性は掠れた声で、セクシーに言った。「ベイビー、開けてくれる?」

喬綿綿の心臓は突然二拍飛ばした。

彼女は手のひらをゆっくりと開き、手に押し込まれたコンドームを見下ろした。

某ブランドのイチゴ味。

サイズは、最大。

*

昼食を食べたのは、それから二時間後のことだった。

外には出なかった。

魏徵がデリバリーを持ってきた。

魏徵がデリバリーをオフィスの外に届け、ドアをノックすると、墨社長が出てきて受け取る際、ちらりと見たところ、墨社長の胸に新しい赤い引っ掻き傷が数本あるのに気付いた。

見たところ、とても新鮮な引っ掻き傷。

明らかについ先ほどついたものだった。