第651章 彼は言った：ベイビー、愛してる

男は彼女の顔を両手で包み、唇に軽くキスをして、名残惜しそうに彼女から離れた。

喬綿綿がナナの側に行くと、ナナは羨ましそうに言った。「わぁ、綿綿さん、あなたと彼氏の仲がすごくいいですね。彼があなたのことをすごく愛しているのが分かります。こんなにイケメンで、こんなに愛してくれる彼氏がいるなんて、すごく幸せですね。」

墨夜司はまだその場に立っていた。

喬綿綿は振り返って彼を見た。

広々としたホールには、人々が行き交っていた。

しかし、彼は最も人目を引く存在だった。

彼の傍を通り過ぎる人々は、男女問わず、彼に視線を送っていた。

周りの人々は皆彼を見ていたが、彼の目には彼女しか映っていなかった。

彼女が振り返るのを見て、彼は口角を上げ、手を振り、唇も動かした。

距離があったため、喬綿綿には彼が何を言っているのか聞こえなかった。

しかし、彼の唇の動きは読み取れた。

彼は言っていた：ベイビー、愛してる。

その瞬間、喬綿綿の目が突然潤んだ。

本当に別れを惜しむ気持ちが湧き上がってきた。

思わず、彼の元に駆け戻りたい衝動に駆られた。

「綿綿さん、泣いてるんですか？」ナナは喬綿綿の目が赤くなっているのを見て、まだその場に立っている墨夜司の方を振り返り、小声で尋ねた。「彼氏と離れたくないんですよね？彼も綿綿さんと離れたくないみたいですね。」

「お二人の仲が本当に良くて、羨ましいです。」

「綿綿さん、これが彼氏と初めての別れなんですか？」

「違うわ。」喬綿綿は鼻をすすり、目頭の涙をこらえた。「前にも離れ離れになったことはあるけど、その時は私が遠くに行くわけじゃなかったの。」

しかも、三ヶ月もの長期間離れることはなかった。

「なるほど。」ナナは理解を示した。「でも、F市と雲城はそんなに遠くないですし、彼が会いに来られますよ。彼氏さんは仕事してるんですよね？」

「うん。」

「じゃあ、週末に会いに来られますね。そうすれば毎週会えますよ。うーん、収入的には大丈夫そうですか？」

喬綿綿：「うん、まあまあかな。」

「じゃあ問題ないですね、毎週の飛行機代くらい余裕で出せそうです。」

喬綿綿：「……」

墨夜司の収入は、毎週の飛行機代どころではない。

毎日の飛行機代だって余裕で出せるくらいだ。