中から手が伸びてきた。
喬綿綿は思わず一歩後ずさりした。
しかし、その伸びてきた手は、彼女をしっかりと掴んでいた。
彼女は「あっ」と驚いて叫び、強い力で部屋の中に引っ張り込まれた。
同時に「バン」という音とともにドアが閉まり、彼女は誰かに掴まれてドアに押し付けられた。
目の前の姿は背が高くすらりとしており、目に入ってきたのは一面の黒だった。喬綿綿が誰に引っ張り込まれたのかを確認する間もなく、顎を掴まれ、男の支配的で熱い息遣いが彼女を包み込み、彼は彼女を抱きしめた。
彼女は恐怖で目を見開き、抵抗しようとした瞬間、懐かしい香りが鼻をくすぐった。
黒く潤んだ瞳の中で、恐怖が驚きに変わった。
この香り……
墨夜司だ。
どうしてここに来たの。
喬綿綿は潤んだ黒い瞳を上げて目の前の男を見つめ、まるで夢を見ているような感覚だった:「墨夜司、どうしてここに……あなたは……」