しかし誰が知っていただろう。そんな男性が一度本当に女性を好きになると、こんなにも情熱的で狂おしいほどになれるとは。
どんなに冷たい氷山の奥底にも、実は燃えるような炎が隠されているのだ。
その炎は、彼らが燃やしたいと思う人に出会った時だけ、激しく燃え上がるのだ。
彼女はとても羨ましく、そして嫉妬していた……
もし、墨夜司が愛している女性が自分だったら、どれほど幸せだっただろう。
きっと、世界で一番幸せな女性になれたはずだ。
でも、彼の愛はそれほど大きいのに、その一欠片さえも彼女には分けてくれない。
彼は全ての愛を、喬綿綿という女性に捧げてしまった。
本当に……悔しくて仕方がない。
隣で泣きじゃくる墨奥様に苛立ちを覚えた。その場を立ち去りたい気持ちを抑えながらも、まだ墨奥様の助けが必要な事が多々あることを思い出した。これから墨家に嫁ぐことになれば、墨奥様は義母となる。どうあっても墨奥様の機嫌を取らなければならない。
そのため、心の中でどれほど焦っていても、耐え忍んで優しく慰めた。「墨おば、司くんは以前こんな風ではなかったとおっしゃっていましたよね。きっと、一時的な迷いだと思います。これは彼を責められることではありません。」
沈柔はハンカチを取り出し、墨奥様の涙を拭いながら、ため息交じりに言った。「昔から『英雄も美人には弱い』という言葉があるように。きっと、司くんの心の中では、まだあなたのことを大切に思っているはずです。ただ……」
「全て妖狐のせいよ」墨奥様は今や喬綿綿に対して極限まで不満を募らせていた。「私の息子がどんな性格か、母親の私が一番よく分かっています。司くんは彼女と付き合ってから、こんな風に変わってしまったの。あの妖狐が私の息子をこんなに魔法にかけてしまうなんて許せない。私たち墨家は前世で彼女に何か借りでもあったの?司くんが今世で彼女に出会うなんて。」
「結婚してまだ間もないのに、司くんがこんなになってしまった。これから一緒に過ごす時間が長くなれば、彼女は司くんと私を敵対させようとするんじゃないかしら?」
沈柔は眉をひそめた。「言うべきではないかもしれませんが、司くんが今日おばさまにこんな態度を取ったのは、もしかしたら彼女が普段から……」